背景:高齢レシピエントは、加齢による免疫応答低下・薬物代謝の低下により過剰免疫抑制状態に陥りやすく、移植後感染症のリスクが高い一方、拒絶反応の発症率は低いと言われている。免疫抑制療法は移植医療に不可欠であるが、高齢者に対する適切な免疫抑制療法は確立していない。当科では、リンパ球混合試験(MLR)を用い術後免疫状態を定期的に評価し、アルゴリズムに従って免疫抑制薬の投与量を調整している。そこで高齢者の術後免疫状態及び免疫抑制薬の投与量・トラフ値を評価し、高齢者に対する免疫抑制療法について検討した。
対象・方法:2009年9月~2020年5月に当科で腎臓移植を受けた患者66名を対象とし、高齢群を60歳以上(16名)、60歳未満を対象群(50名)とした。免疫抑制療法はCsA,MMF,MPの3剤を用い、術後1,3,5年目のMLRによる免疫状態の評価及び免疫抑制薬の投与量、トラフ値を検討した。
結果:術後1,3,5年目の免疫状態は、高齢群と対象群共に抗ドナー・抗
サードパーティー
応答は適正に維持されていた。CsAのトラフ値はいずれのポイントでも同等であったが、経年的に高齢者群の投与量は有意に減少した。MMF、MP投与量に有意差は認めなかった。移植腎機能や拒絶反応等合併症の発生に有意差は認めなかった。
結語:高齢レシピエントに対し、CsA投与量の減量は可能であるが、トラフ値の維持は必要である。高齢者と言えども免疫学的高リスク症例では、免疫抑制療法は慎重を要する。
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