細胞毒性試験において, 細胞毒性を有する物質の細胞周期回転への影響を定量的に解析することを試みた.10μMのCdCl
2に曝露されたHeLa細胞, および2, 000または3, 200μg/mlのMMAに曝露されたヒト歯髄由来LSC細胞のDNA相対量を, 曝露後数時間ごとにフローサイトメトリーにて測定し, DNAヒストグラムの時系列データを得た.細胞周期回転は連続系システムとして数式モデルで表し, また化学物質の諸作用や培養条件の変化による変動を線形独立と仮定し, 偏微分の和によって表した.これらの化学物質のHeLa, LSC細胞への影響は,
システムダイナミクス
によってシミュレートし, 過渡状態を再現することにより, それぞれの細胞周期上の各期の間の移行率の変化として定量的に記述することができた.CdCl
2はHeLa細胞に対してS期の進行およびG
2期滞在時間を対照群のそれらに比較し20および25%延長した.MMAはLSC細胞のS期を対照群に対し50%, G
2+M期を80〜83%遅延し, 分裂後約50%が正常G
1期DNA量以下の細胞となった.
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