抄録
本研究の目的は, 細胞毒性試験における細胞周期の解析を行うための新しいシステムダイナミクスモデルを開発することである.作成した解析法は, CdCl2およびPb-EDTAに48時間曝露されたVMCsおよびLMCs骨芽細胞から得られたDNAヒストグラムについて動的特性の再現性を試験した.シミュレートしたヒストグラムは, 実験で得たDNAヒストグラムを再現していた.このシステムダイナミクスモデルを用いた解析により, CdCl2は細胞周期のS期およびG2期滞在時間を延長すること, また, Pb-EDTAはG1期からS期への移行を抑制することが確認できた.本研究で得られた新しい解析法は, 細胞毒性を有する化学物質の細胞周期の相に対する作用点を明らかにする上で, また, 細胞周期を動的に解析する上で有用であることが明らかとなった.