院内感染について論じるうえで, 病院環境内の細菌分布を定期的に調査することは重要なことである. そこで今回, 新病棟移転後7年間における調査を行い, 旧病棟のそれと比較した. 空中細菌については, 落下細菌数は移転2ヵ月後から旧病棟とほぼ同等となり, 菌種としてはCNSは継続して検出されたが, 黄色ブドウ球菌と腸内細菌群は近年減少していた. また, GNF-GNRは経年的にその種類が変化し, 7年後には
Pseudomonas属と
Flavobacterium属が主であったが緑膿菌は一度も検出されなかった. また表面環境細菌については, その定着までには空中細菌と異なり約3年程度かかり, 水場から広がることが考えられた. 菌種では, 空中細菌として検出されたGNF-GNRのほかに, 院内感染菌としてとくに問題となる黄色ブドウ球菌や緑膿菌が検出された. さらに, 病院内の流しと病院外の流しで緑膿菌の検出率を比較したところ, 病院内は高頻度に汚染されていた. また黄色ブドウ球菌の鼻腔保菌率を, 医師と病棟には出入りしない教育課程の学生とで比較したところ, 保菌率には差がなく, またMRSAも検出されなかった. したがって病院内環境細菌が院内感染の感染源とならないようにするためには, 水場を中心とした消毒と, 患者が汚染場所と接触するのを防ぐことが重要であると考えられた.
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