当院での老人性白内障手術件数は, 1985年は78件, 1992年は142件で, 8年間で約2倍に増加し, 90%以上が眼内レンズを挿入している。手術後の外来通院患者に, 意識調査を行ったところ, 手術前, 日常生活に最も影響が大きかったことは, 活字が見えないことであるという結果を得た。白内障患者は, 著しい視力低下があり, 不安が大きい。そのため, 術前オリエンテーションは重要である。従来, 術前オリエンテーションに使用していたパンフレットは, B5判で文字が小さく, 十分に活用されていなかった。そこで, F8判の
スケッチブック
に入院のしおりを作成し, 入院中の白内障手術患者に, 術前オリエンテーションを実施した。
スケッチブック
は病室内に設置し, 退院時に感想を聞いた。文字の大きさは90%が見やすい, ちょうど良いとし, 内容は100%がわかりやすい, 詳しいと答え, 50%が2回以上利用していた。この結果から, 文字を大きくすることができ, イラストで表現できる, 説明を強調する, 繰り返し見直しできる, という利点のある
スケッチブック
は, 効果があった。活字に不便を感じる白内障患者には, 文字を大きくし, イラストなどにより, 視覚に訴えることで, 老人の特性に合わせた, わかりやすいオリエンテーションが, できることがわかった。また, 手術前後の経過を知ることで, 患者は気持ちが前向きになり, 手術に対する心構えを作る手助けとなった。
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