重症心身障害者に対する適切な歯科的健康管理の確立を目的とし,国立療養所に入院中の重症心身障害者140名について,歯科的管理を5年間にわたって行った後の翻蝕と歯周疾患について調査を行った.
1.全面介助による1日2回のブラッシングが習慣化されていた.介助する時の職員のブラッシング方法は,64.3%が横磨きであった.
2.介助によるブラッシングにおおむね適応している者は85.0%であった.しかし2.1%の者は,ひどく嫌がって前歯も磨かせなかった.
3.平均OHI-Sは1.53で,部位別に清掃状態をみると,上顎前歯部唇面が最も良く,下顎左側臼歯部舌面が最も不良であった.
4.1人平均DMF歯数は,12.51歯,DMF歯率48.2%であった.そのうち1人平均の未処置齲蝕歯は,2.07歯であり,歯科治療体制を含む歯科的健康管理の確立によって,齲蝕の問題はほぼ解決できていると思われた.
5.歯肉増殖・肥大は,19.3%の者に認められた.そのうちフェニトイン服用者の歯肉増殖発現率は,38.5%であった.
6.限局型歯肉退縮は,10.7%の者に認められ,下顎前歯部唇側歯肉に最も多く,介助者の横磨きとの関連が示唆された.7.歯周治療の要求度(CPITN)をみると,全く歯周治療の必要のない者は10.8%で,なんらかの治療が必要となる者は89.2%であった.
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