近時,科学技術の進歩にともなって,純粋物質の性質についての知識が非常に重要であることが一般に認められ,また一方,いろいろな実用上の規準物質,あるいは各種製造工業における原料として高純度物質に対する要望が高まり,物質を高純度に精製する種々の方法が開発されてきた.ここで述べる
ゾーンメルト法
(zone-melting)とは原理的にはFig.1のように長い固体柱の中で比較的幅の狭い溶融帯(以下ゾーンと略記)をその長さの方向に沿って移動させるという操作で,主として固体物質の精製に用いられている.またこの方法は別の利用法として激量物質の濃縮や,あるいは逆に微量物質を主成分中に均一に分布させることなどに用いることができる.
1952年,Pfannによって半導体用の高純度ゲルマニウムの精製に用いられて以来,数多くの人によって
ゾーンメルト法
の金属,合金,無機化合物など,種々の固体物質への応用が報告され,最近では特に有機化合物の精製にしばしば応用されて成功している.
総括的な成書もすでにPfann
1),Helington
2),Schildknecht
3)らによってあらわされ,その理論的基礎,操作技術上の諸問題,豊富な種々の応用例がまとめられているので,本稿では筆者らの研究室で行なってきた研究をおもに金属キレート類の分離精製法としての
ゾーンメルト法
の応用という面に限って述べることにする.
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