わが国において,社会的養護を受ける子どもたちはその約17.5%が家庭養
護である里親に委託され,残りの大半が施設入所となる.なぜ里親委託が伸展
しないのか.これまで多くの児童福祉関係者,研究者,また里親自身が,その
要因は「里親の不足」にあると考えてきた.しかしながら,子どもが委託され
ていない未委託の里親は多い.なぜ,未委託の里親が多数存在するにもかかわ
らず,里親が不足していると認識されているのか.本稿においては,「里親の
不足」という論理がどのように成立しているのかを,インタビュー調査を通し
て明らかにすることを目的とする.
インタビュー調査の結果,里親が不足しているのではなく,「任せられる」
里親が不足していることが明らかになった.「任せられる」里親とは,児童相
談所の支援があまりなくとも子どもを養育していける里親を意味していた.結
局,児童相談所による里親への支援が可能な環境を整備することが重要である
と考えられる.
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