圖2によれば,綜合誤差は零線を基準として波形を示してゐる.No.1
ダイヤル
・ゲージに於て,誤差経過の折線は何れも互に類似的に凡そ1mmの周期的波形を現し,1mm毎の峯よしり1/4波長の點に於て小さく上下,1/2波長に於て谷となり,更に3/4の黙に於て1/4の場合と類似の傾向が見られるが,No.2試料にはかゝる経過は認められない.
更に何れの線圖によつても,最大誤差±10μを超えたものは見られなかつたが,8種の試験状態に於ける結果の比較研究に資するために,次の數學的處理を行つた.
即ち
ダイヤル
・ゲージの0.10mm(10目盛毎)の理想値を萬能測定顯微鏡に依つて
n囘(第1表より
n=100となる)繰返し測定した場合に相當すると考へて,その最も確からしい値として,測定値
x1,
x2,……
xnの算術平均
X=Σ
x/
nを求め,更に残差δ=
x-
Xより算術平均の公算誤差に關するBessel式
R=±0.6745√Σδ
2/
n(
n-1)
によつて算出したる結果は
No.1
ダイヤル
・ゲージに於て
静摺動往き 0.1003571±0.0001772mm
静摺動復り 0.1003200±0.0002217mm
衝摺動往き 0.1001842±0.0001966mm
衝摺動復り0.1001055±0.0002088mm
No.2試料た就て
静摺動往き 0.1002907±0.0001703mm
静摺動復り 0.1001665±0.0002012mm
衝摺動往き 0.1002140±0.0001396mm
衝摺動復り 0.1000069±0.0001549mm
を得た.
式中第1項は,10目盛について
ダイヤル
・ゲージが理想的には0.10mmを示すべき場合に,0.10mmを基準とした正,負の誤差の総平均値に相等するもので,
ダイヤル
・ゲージの精度を示す要素であり,第2項は波形の上下に變動する状況を示すもので,誤差の發生する可能度即ち公算を與へる.從つて結論として
(a),概して復り行程に於て良好な干均精度であるが,誤差發生の公算は多い.
(b),衝動の場合は,輝動測定の時に比較して,正しい指度を與へ,且つ誤差の發生率も少い.
(c),No.2がNo.1に比較して,やゝ良好な結果を示してゐる.
が擧げられる.(a)には多少考究の餘地があるやうに思はれるが,今の場合は上の様に推斷し,更に將來の研究にゆづる事と致し,(b)は最も重要な事項であつて,この特性を利用する事が最も正しい
ダイヤル
・ゲージの使用法と云ひ得る.
以上は
ダイヤル
・ゲージの10目盛毎に就ての結果であるが,0.01mmの最小目盛毎に就ても相似的な傾向を想像して差支へないと思ふ.
尚上式第1項が何れも0.100mmより若干大きい事は,實験方法の不都合に基因するものでは無いと思はれる.完全に注意深く行ひ,且つ既に述べたる如く,ブロック・ゲージの組合せ等も各試料に就いて變更して行つたもので,全く偶然の結果と思はれる.
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