【目的】
近年、各地で転倒予防・介護予防の様々な取り組みが行われている。今回、我々は、高齢者が自身の機能を認識する重要性に着目し、機能訓練事業B型(地域参加型)の参加者に対して生活機能及び身体運動機能について調査・測定し、簡単な評価・指導も加え、若干の検討を行ったので報告する。
【対象】
福岡県Y町在住の平成15年度機能訓練事業B型の参加者191名(男性49名、女性142名)、年齢61~90歳(平均74.96)である。そのうち11名(5.8%)が介護保険下における要支援の認定を受けていた。
【方法】
平成15年5~9月、同町内の各公民館(12カ所、1カ所平均15.9人)にて実施。教室の内容は、バイタルチェック、準備体操、生活機能調査票(転倒アセスメント及び仮称TAICFを参考に作成)の記入、身体運動機能測定として握力・ファンクショナルリーチ(以下FR)・開眼片足立ち・つま先立ち・5m歩行を実施、評価(転倒に関する体力テストの評価基準値を使用)及び指導、箸置き作り、おたっしゃ体操(柔軟、ハーフスクワット、ステップ等6項目)の順であり、所要時間は約90分であった。そして、生活機能と身体運動機能の比較において統計解析を行った。
【結果】
概況では、有職率28.3%(家事44.4%、農業40.7%)、有病率28.3%(高血圧、心疾患、脳血管障害等)、何らかの痛みを持っている方は33%であった。「この1年間の転倒の経験あり」は21.5%、「転倒に対する不安あり」は29.8%であった。生活機能面では、買い物・洗濯・部屋の掃除は80%以上の方が行っていると答えたが、電球の取り替えは45%の方が行っていないと答えた。また、75%以上の方が趣味(カラオケ・園芸・
ダンス
等)を持っていたが、スポーツに取り組んでいる方は17%にとどまった。身体運動機能面では、握力7~47kg(平均22.3)、FR12.8~43.6cm(平均32.2)、開眼片足立ち0.9~180秒(参考平均29.1)、つま先立ち1.2~180秒(参考平均76.5)、5m歩行2.4~13.2秒(平均3.9)であった。種々の比較検討で有意な関係を見出せたが、その中で、「転倒の有無」については、FR・開眼片足立ち・つま先立ちでは有意差はなかったが、握力・5m歩行にてP<0.01で有意差を認めた。
【考察】
今回、地域住民レベルで生活機能と身体運動機能の調査・測定を行い、参加者の多様性が懸念されたが、多くの項目で傾向を見出せた。生活面での高齢者自身の認識や行動が、身体運動機能に反映されているものと考える。転倒においては、より動的な機能を表す5m歩行や、全身的な筋力の指標とされる握力との関係を伺わせる結果を得た。今後は、活動を継続していく中で、時系列的測定評価、活動へのアンケート等、様々な視点から検討を行っていきたいと考える。
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