〈症例〉症例1は,42歳女性。身長160cm,体重70kg。平
成18年6月8日に,うつ病で精神科に入院。入院前に糖尿
病無し。入院後より,フマル酸クエチアピンの内服を開
始。平成18年8月に嘔吐を認めるようになり検査をした
処,BS322mg/dl,HbA1c11.1%,抗GAD 抗体37.4U/
ml と自己免疫性1型糖尿病を発症していた。フマル酸ク
エチアピンの中止に加えて,強化インスリン治療を継続し
た処,HbA1c6.3%まで改善。HLA-DR アリルは,DR
4,DR9,HLA-DQ アリルは,DQ3,DQ4であり,自
己免疫性1型糖尿病に疾患感受性のHLA-DR,HLA-DQ
アリルを保有。症例2は,67歳男性で糖尿病既往歴なし。
身長152cm,体重58kg。認知症にて近医にて入院中であっ
た。平成20年7月よりオランザピンの内服を開始。平成21
年1月半ばより発熱,1月26日に意識レベルの低下,高血
糖を認め,当院紹介。入院時,BS872mg/dl,HbA1c
9.8%,抗GAD 抗体<0.3U/ml と2型糖尿病による高浸
透圧性糖尿病性昏睡を発症していた。オランザピンの中止
に加えて,強化インスリン治療を継続し,その後グリメピ
リドの内服に変更しHbA1c6.9%まで改善。HLA-DR ア
リルは,DR4,DR15,HLA-DQ アリルは,DQ3,DQ
6であり,自己免疫性1型糖尿病に疾患感受性のHLADR,
HLA-DQ アリルを保有しておらず。
〈考察〉一部の抗精神病薬には,高率に糖尿病昏睡を誘発
させる危険性が指摘されているため,使用時,使用後に
は,HbA1c や血糖値のチェックを定期的に行う必要があ
る。加えて,自己免疫性1型糖尿病に疾患感受性のHLADR,
HLA-DQ アリルを保有する患者は,抗精神病薬服用
を契機に自己免疫性1型糖尿病を誘発させる可能性があ
り,注意する必要があると考えられた。
抄録全体を表示