第208回通常国会において成立した「電波法及び放送法の一部を改正する法律」は、電波の公平かつ能率的な利用を促進するため、①電波監理審議会の機能強化、②特定基地局の開設指針の制定に関する制度の整備、③電波利用料制度の見直し等を行うほか、近年の放送を取り巻く環境の変化等を踏まえ、④情報通信分野の外資規制の見直しを行うとともに、⑤日本放送協会の受信料の適正かつ公平な負担を図るための制度の整備等の措置を講ずるものである。
①については、電波の有効利用の程度の評価は、これまで総務大臣が電波の利用状況調査の結果に基づき行ってきたところ、技術の進展等に対応したより適切な評価を行うため、広い経験と知識を有する委員から構成される電波監理審議会が行うこととする。また、電波監理審議会からの勧告に基づき総務大臣が講じた施策について電波監理審議会への報告を義務付けることとする。
②については、総務大臣は、携帯電話等の既設電気通信業務用基地局が使用している周波数を使用する特定基地局の開設指針については、次の場合に限り定めることができることとする。
・ 当該既設電気通信業務用基地局が使用している周波数についての有効利用評価の結果が一定の基準に満たないとき
・ 後述の、開設指針の制定をすべき旨を総務大臣に申し出ることができる制度に基づき申出がされた開設指針の制定が必要であると決定したとき
・ 電波の公平かつ能率的な利用を確保するため、携帯電話等の周波数の再編が必要と認めるとき
その他、上記の開設指針について、その制定をすべき旨を総務大臣に申し出ることができる制度を創設する。また、携帯電話等の周波数の割当てに当たって、開設指針の記載事項として、例えば、事業者ごとの割当て済みの周波数の幅等を勘案して、事業者ごとに申請可能な周波数の幅の上限に関する事項など電波の公平な利用の確保に関する事項を追加する。加えて、電気通信業務を行うことを目的とする特定基地局の認定開設者は、認定計画に記載した設置場所以外の場所においても、特定基地局の開設に努めなければならないこととする。
③については、今後3年間(令和4年度~令和6年度)の電波利用共益事務の総費用等や無線局の開設状況の見込み等を勘案した電波利用料の料額の改定を行う。また、電波利用料の使途として、Beyond 5Gの実現等に向けた研究開発のための補助金の交付を追加する。
④については、基幹放送の業務の認定申請書や基幹放送局の免許申請書の添付書類等の記載事項として、外国人等が占める議決権の割合等を追加するとともに、当該事項の変更を届出義務の対象に追加する。また、外資規制違反に対し、一定の要件を満たす場合にその是正を求める制度を整備する。
⑤については、日本放送協会は、毎事業年度の損益計算において生じた収支差額が零を上回るときは、当該上回る額の一定額を還元目的積立金として積み立てるとともに、積み立てた額は、次期の中期経営計画の期間における受信料の額の引下げの原資に充てなければならないこととする。また、受信契約の条項の記載事項を法定化するとともに、受信契約の締結義務の履行を遅滞した者に対して日本放送協会が徴収することができる当該義務の履行を遅滞した期間の割増金に関する事項を規定することとする。
その他、基幹放送事業者が、基幹放送の業務等の休止又は廃止をしようとするときは、その旨を公表しなければならないこととする等の所要の制度整備を行うこととする。
抄録全体を表示