本研究は,高齢期の精神的健康のポジティブな側面を評価するために,日本語版MHC-SF尺度(MHC-SF-J)の妥当性と信頼性の検証を行うことを目的とした.60歳以上の地域在住の協力者567人に対して,MHC-SF-Jおよびその他の尺度・指標に回答してもらい,欠損のない547人の回答を使用して分析を行った.確証的因子分析(3因子2次因子モデル)の結果,MHC-SF-Jは原版と同様,3因子構造でおおむね良好な適合度指標を有することが確認された.信頼性に関しては,MHC-SF-Jの合計得点および3つの各下位因子得点のCronbach’s α係数は0.84〜0.94で高い内的整合性が担保されており,また,当該尺度の下位尺度の得点パターンから分類されるもっとも精神的健康が良好なflourishing(
フラリッシュ
)の割合が23.6%であったことはおおむね先行知見と一致していた.また,ポジティブな精神的健康と関連が想定された尺度や指標との相関関係を検討した仮説検証においても,おおむね有意な関連が認められ,MHC-SF-Jの構成概念妥当性は確認された.
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