「背景, 目的」重粒子線がん治療においても, 多門照射法は, 照射門数, 各門の照射角度, 線量配分比などの照射係数を適正に調節すれば, 腫瘍部の線量集中度を向上させ, さらに正常組織の線量付与を低く抑える照射法と考えられるため,(1) 多門照射の有効法, 及び (2)
ボーラ
ス無での多門照射の実現可能性について理論的に検討し, その検討結果を照射システム改善の一助にする.「材料, 方法」多門照射の線量分布は治療計画装置 (HIPLAN) を使い各門毎に計算し, その後各門毎の線量分布を任意に加算して作成する. 照射条件の優劣判断は, 正常組織の障害発生確率 (NTCP) の計算で用いる50%耐容線量 (
TD50) 及び実効体積 (V
eff) の大小変化で行う.「結果, 考察」(1) 照射門数の増加に伴って
TD50は緩やかに増加し, 約10門で一定の
TD50に漸次収束する傾向がみられる. つまり, 重粒子線による多門照射法は正常組織の線量付与の低減化に繋がる有効な照射方法になりうる.(2)
ボーラス有とボーラ
ス無の
TD50を比較検討した結果, 標的半径が小さい場合には両者の差が縮まる傾向がみられ, 小標的に対する多門照射は
ボーラ
ス無で実現できる可能性がある.「結論」重粒子線多門照射法に関する基礎事項 (照射法の有効性, 照射門数の漸近収束値,
ボーラ
ス無での多門照射の実現可能性) を理論的に検討し, 重粒子線多門照射法の基礎的理解を得た.
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