オオミノガEumeta variegata(=E.japonica)は樹木害虫として知られ,日本列島南半部に分布している種である.近年オオミノガヤドリバエNealsomyia rufellaが日本に侵入し,日本各地の主要な都市部ではほぼ壊滅状態に陥ると言われるほどオオミノガの個体群密度を著しく低下させている.本研究ではオオミノガに対するオオミノガヤドリバエによる高知県での寄生状況を調査した.1999年12月から2000年5月,および2000年9月から2001年4月にかけて,高知県の平野部全域でオオミノガのミノを採集した.採集したミノの全長を測定した後,ミノを切開してオオミノガヤドリバエの寄生の有無を調べた.ミノ内のオオミノガの幼虫が生きていた場合には室内で飼育し,オオミノガヤドリバエの寄生の有無をさらに確認した.オオミノガヤドリバエによる寄生率は地域によって0〜96.4%と大きく異なり,高知県全体でも1999年世代は29.5%であったのに対して2000年世代は90.3%と大きく上昇した.特に高知県中央部の都市部で寄生率が高い傾向が認められた.寄生をうけた幼虫のミノの全長は18mm以上であり,若齢幼虫もオオミノガヤドリバエに寄生されることが確認された.しかし,特定のサイズに偏るような傾向は認められなかった.一方,オオミノガヤドリバエの囲蛹からアシブトコバチ科など4科7種の寄生蜂が羽化脱出した.本研究の結果,高知県では2001年現在オオミノガは絶滅状態ではないこと,オオミノガヤドリバエはオオミノガだけで1年のライフサイクルを維持できる可能性があること,オオミノガヤドリバエに寄生する寄生蜂が存在することが明らかになった.
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