本研究では,第1に,ダイ族住居の伝統的な住空間構造を明らかにし,第2に,近代化・漢族化されたダイ族住居で,伝統的住空間構造がどのように変容,ないし,継承されているかを明らかにしようとした。その結果,以下の知見を得た。(1)ダイ族の伝統的住空間構造は,ウチ・ソト,カミテ・シモテの2つの空間概念によって説明される。(2)伝統的住居には,敷地の外から寝室内に至るまでの4段階のウチ・ソト領域構成が存在する。(3)伝統的住居には,カミテ・シモテの空間軸が直交して2つ存在する。第1の空間軸の最も力ミテ,第2の空間軸の最もカミテに,家の神(ティウラ・ヘン)が祀られ,ここが住居内の最上位空間になっている。(4)近代化・漢族化が進んだ集落でも,家の神を祀ることは継承されている。(5)近代化・漢族化が進んだ集落でも,大多数の住戸に伝統的住空間構造が継承されている。しかし,伝統的住空間構造が崩れた事例や,伝統的住空間構造が完全に消滅した事例も散見される。
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