研究目的 : 歯周病がさまざまな全身疾患のリスクを高めることが報告されているが, その機序として, 歯周病原細菌が腸管に運ばれ, 腸内細菌叢の恒常性を破綻させることで負の影響を与える可能性が考えられている。本研究では, Porphyromonas gingivalisを経口投与したマウスの腸内微生物叢および全身状態に及ぼす影響を調べた。
材料と方法 : マウスを3群に分け, P. gingivalis生菌 (Pg-L), P. gingivalis死菌 (超音波破砕物, Pg-D), または生理食塩水 (co) を週2回, 5週間経口投与した。糞便を採取し, 16S rRNA遺伝子解析により腸内細菌叢を調べた。また定量的PCR法にて腸管におけるタイトジャンクション関連タンパク質および小腸と肝臓における炎症性サイトカインのmRNA発現量を調べた。
結果 : UniFrac解析によりPg-D群とco群もしくはPg-L群との間で腸内細菌叢の構成に違いが認められた。細菌投与群では肝臓におけるIl6のmRNA発現が上昇していたが, 小腸におけるタイトジャンクション関連タンパク質のmRNA発現には変化が認められなかった。
結論 : P. gingivalisの経口投与によりマウスの腸内細菌叢に変化が認められた。歯周病原細菌の投与が全身で慢性炎症を惹起する可能性が示唆されたが, これに腸内細菌叢の変化が関与した影響は限定的であるかもしれない。
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