抄録
薬物の膜透過性の評価に生体由来の初代ヒト腸上皮細胞と脳毛細血管内皮細胞(BMECs)を使用することが望ましいが、低い生存率や細胞の寿命が短いなど使用において制限がある。加えて、医薬品候補化合物の薬物動態試験や安全性試験などの創薬研究のために、初代ヒト腸管上皮細胞やBMECsを入手することは非常に困難である。ヒトの小腸および血液脳関門(BBB)における薬物動態を正確に予測するには、生体由来の正常なヒト腸管上皮細胞やBMECsと同等の機能を有するヒト人工多能性幹(iPS)細胞由来の腸上皮細胞および脳毛細血管内皮細胞様細胞の開発が必要とされている。本総説では、創薬研究支援モデルを構築するために、iPS細胞から腸管上皮細胞、腸管オルガノイドおよびBMECの作製について筆者らの研究を中心として紹介する。