現在の農山村地域では、高度経済成長期以降の若年層の人口転出により少子・高齢化が顕著になっており、それに伴う限界集落化によるコミュニティの崩壊も進んでいる。このため、行政や住民による社会的結節点やサポートの重要性が指摘されているものの、行政の財政難や担い手の確保の難しさから、困難な状況になっている。
このような状況下において、近年社会的企業が新しい公共の担い手として注目されている。また、他方で過疎地域では、少子化に伴う学校統廃合が近年進んでおり、学校という公共空間の跡地活用が課題となっている。本研究で事例とする徳島県
三好市
三野地区太刀野山地域では、旧太刀野山小学校の跡地において、「
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休廃校等活用事業」のもとで、徳島市内の民間企業が高齢者サロンや通所介護を運営しながら集落維持に取り組んでいる。本報告では、廃校活用による集落維持の取組みの可能性とこれらの取組みが集落住民を含めた地域へ及ぼす影響を明らかにする。
2.研究方法 三好市
休廃校等活用事業については、
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へのヒアリングをした。また、廃校活用施設における取組みについては、活用事業者へのヒアリングをした。さらに、集落維持の取組みが及ぼす地域への影響について明らかにするために、2015年9月に太刀野山地域に居住する全住民に対して対面式によるアンケート調査を実施した。アンケートは、世帯票と個人票とに分けて実施し、それぞれ101(59.8%)、159(51.6%)の回収を得られた(母数は同時期の住民基本台帳による人数)。
3.休廃校活用による集落維持の取組みの概要 太刀野山地域では、基幹産業であった葉タバコ栽培の衰退によって高度経済成長以降に人口が減少した。それに伴い、太刀野山小学校の生徒数も減り、2004年には生徒数が0人になり休校となった。その後、2013年より
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休廃校等活用事業が実施され、無償貸与による事業者の公募が始まった。ここに徳島市内の民間企業が跡地活用に応募し、2013年から高齢者サロンや通所介護を中心とした集落維持の取組みを実施している。
同施設の収入源は、介護保険事業の通所介護、みよし広域連合からの委託による地域支援事業の介護予防事業、自主事業の介護予防体操教室、高齢者サロン・カラオケなどがあり、介護保険事業が大半を占めている。支出は賃料が無料であるため、人件費と光熱費が大半を占めている。
4.休廃校活用による集落維持の取組みが地域へ及ぼす影響 同施設が開設される以前は、集落内の住民が集まる機会は自治会が開催される年4~5回程度であり、太刀野山地域全体の住民が集まる機会は、ふれあい運動会と社協主催のいきいきサロンの年2回程度であった。しかし、同施設が開設された以降は、集落内の住民が毎週顔を合わせることになり、太刀野山全体でも4月に花見が開催されることで集まる機会が増加した。その結果、安否確認において民生委員の負担が減少しているほか、アンケート調査によると施設利用者は外出頻度が増加したケースが59.0%、友人との交流が増えたケースが71.8%、地域行事への参加が増えたケースが33.3%、健康状態が良くなったケースが38.5%と効果が表れ始めている。
また、住民は同施設の必要性について67.3%が肯定的に捉えており、事業者の撤退を危惧して施設を守るために他地域から友人を勧誘したり、集落維持に向けた前向きな発言をするなど危機感を持ち出していることも大きな効果である。
5.おわりに 以上のように、廃校活用事業により太刀野山地域および住民の活力は向上したといえるが、今後人口が自然減しサービス需要が減少していく中で、事業を継続していくためには高齢者福祉以外の事業展開が必要であり、事業者では就労体験型宿泊などを実施することを検討している。
※本研究を行うにあたり、科学研究費補助金(基盤研究(A)『「社会保障の地理学」による地域ケアシステムの構築のための研究』研究課題番号:15H01783,研究代表者:宮澤仁),(基盤研究(B)を使用した。
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