医生物学の進展に伴い大型実験動物として, 実験用小型豚の必要性が増している。筆者らは1978年に, オーミニ系交雑種雄豚1頭, 雌豚2頭を導入し, 閉鎖集団として現在まで繁殖してきた。その間における近交係数の推移, 産子数, 生存率, 主要体尺測定値および本ミニブタの特徴について示すと次の通りである。
1. 1978年に導入してから1989年に出生した個体でほぼ6~7世代に達した。出生時期を3期に大別して平均近交係数を示すと, 第1期 (1978~1980); 12.5%以下, 第2期 (1981~1985); 28.2%, 第3期 (1986~1989); 41.4%であった。最も近交係数の高い個体は57.0%までになっている。
2. 産子数は, 全飼育期間中の分娩例で平均5.0頭 (N=45) に対して, 第1期で5.7頭, 第3期で4.7頭と1頭減少した。しかし, 分娩季節による産子数の違いをみると, 春子; 5.5頭, 夏子; 5.1頭, 冬子; 5.0頭に対し, 秋子は4.0頭と最も少なく, 近交係数増加の影響よりも夏季の交配時の影響をより受けていた。
3. 生存率では全平均の78.0%に対して, 第1期の77.2%から第3期の74.5%まで2.7%低下した。分娩季節でみると春子72.7%, 夏子90.2%, 秋子77.5%および冬子66.0%と冬季に著しく低下した。
4. 主要体尺測定値 (体重, 体長, 体高) でみると, 生時体重雄0.55kg, 雌0.50kgのものが, 6ヵ月齢 (雄20.5kg, 74.6cm, 39.5cm, 雌23.7kg, 74.7cm, 38.9cm), 12ヵ月齢 (雄36.7kg, 88.6cm, 47.9cm, 雌40.1kg, 87.3cm, 44.9cm) および18ヵ月齢 (雄48.6kg, 100.2cm, 54.0cm, 雌58.1kg, 94.9cm, 51.5cm) であった。
5. 毛色は白色がほとんどであるが一部斑点状の黒点が現れる個体がある。また, 完全な黒色のものが全期間中13.7%出現した。性質は極めて温順で人に懐き易い。
以上のことから本ミニブタ集団は小型, 白色かつ取り扱い易い近交系ミニブタとして確立したものと考えられ, 今後の大量増殖による有効利用が望まれる。
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