本研究は中国民営企業(民企と略す)の生産現場に焦点を当て、現地調査を通じて、そこに生きている日本的生産方式の実態を考察し、中国民企の成長と日本的生産方式の再移転の関係性を明らかにすることを目的とする。
まず、民企の生存環境を確認する上で、本研究の日本的生産方式の再移転と民企の成長という「補完関係」の視点を提示した。そして、日本人原田社長がSolid社で育成した人材7名の当事者に、その民企での活躍を確認し、下記の諸点が明らかとなった。
1)それぞれ民企で大きな成果をあげた。それは品質の改善、生産性の向上、在庫の削減など、それによる売上高の上昇をもたらした。
2)「原田式マネジメント」、とりわけ「卒業促進」制度については、人材育成の重要な一環であると同時、外企・民企の「補完関係」を成立させる重要な触媒の役割を果たすこととなった。
3) 日本的生産方式の「移転」と「再移転」
原田社長による外資系企業への日本的生産方式の「移転」プロセス対して、育成された人材の民企への移動により、民企へのさらなる伝播、「再移転」のプロセスを形成することとなる。
ただし、民企の創業者等は、その経歴や認知レベルが異なり、人材に求めるものも様々である。優れたシステムでもうまく認識できず、「適応」せざるをえない点が多いのも事実である。これについて今後の課題にする。
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