日本では, 本格的な少子化時代を迎え, 次代を担う子どもの養育環境整備が社会的課題となっている. その一環として, 保育所サービスの多様化・弾力化が進められており, 国は利用者の保育所選択権を認める新たな保育所入所制度を導入した. これにより, 保育所間で競争が起き, 地域における保育所サービスの拡充が進むとされる. ただし, その前提条件は, 利用者が本当に利用しやすい保育所を選択することであり, そのためには,保育所入所後の利用者の生活実現に関する情報が必要とされる. そこで本稿では, 東京都
中野区
における将来の認可保育所の利用環境を, 利用者が長時間保育を利用して長時間勤務をするという生活の実現可能性に注目して考察した. その結果, そうした生活の実現は, 地域における長時間保育の実施保育所の数と配置によって左右されることが改めて確認された. 特に, 本来の長時間保育の対象である長時間通勤を要し, 長時間勤務をする人に対しては, 駅に比較的近い保育所でのその実施が効果的であった. しかし, 長時間保育は, 提供するにせよ, 利用するにせよ, 高費用という問題を常にともなう. つまり, 保育所の選択は可能になるが, それ以前に, 地域において費用的に利用可能, かつ利便性の高い選択肢の確保が必要とされる. それには, 今のところ, 国と自治体, 各保育所の調整能力に期待がかかる.
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