中枢神経系virus感染症の流行状況の実体を捕える目的で,昭和37年より39年の3カ年にわたつて関東を中心とした地域の一般病院で扱われた無菌性髄膜炎67例と脳炎29例にvirus学的病原検索を行なつた.その結果, 47例(49%)に病原を確定し,その内訳は日脳感染例18例, ECHO 4感染例28例, CoxA 9感染例1例であつた.日脳感染例は例年にわたつて散発的に発生したが昭和39年8月より10月にかけてECHO 4による無菌性髄膜炎が静岡,福島地区に流行した.この静岡,福島地区と期を同じくして本邦の各地でもECHO 4による無菌性髄膜炎の流行がみられたが,これら流行は本邦で報告された最初の流行例である.静岡,福島地区の無菌性髄膜炎例を対象とし, ECHO 4に対してCF反応と中和試験を施行して両反応の成績を比較したところ, CF反応で45例中11例,中和試験で48例中21例の診断成績をえた.この相異の原因として両抗体価の上昇時期や,抗補体の存在などが関与することを明らかにした.
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