従来, 日本人には高血圧が多かったが, 沖縄県は高血圧の頻度が少ないと言われてきた. しかし, 沖縄県が日本に返還され, 20年以上経た現在においても同様のことが言えるのかを明らかにするため, 沖縄県の一離島である
伊江村
とその対照として愛媛県面河村在住の高齢者の血圧について比較検討した.
対象は, 両地域在住の75歳以上の高齢者で, 6カ月以上の施設入所者, 長期入院者は除いた. 家庭訪問により自動血圧計を用いて座位で血圧を2回測定し, その平均値を採用した. また, 同時に降圧薬の服用の有無を問診した. 厚生省長寿科学総合研究研究班が提唱している老年者の高血圧治療ガイドラインー1999年改訂版一が勧める, 70歳以上の高齢者の血圧治療の対象血圧である収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上の両方またはどちらか一方をみたすものと降圧薬を服用しているものを血圧高値者と定義し, 収縮期血圧160mmHg未満, 拡張期血圧90mmHg未満の両方をみたしかつ降圧薬を服用していないものを血圧非高値者とした.
両地域で比較すると, 血圧高値者の割合は,
伊江村
で48.5%, 面河村で56.6%と有意差を認めなかった. しかし, 血圧高値者で降圧薬を服用している者の割合は
伊江村
54%, 面河村74%と面河村のほうが有意に高かった. 降圧薬を服用している者の適正値以下への治療効果については両地域で有意な差を認めなかった. 沖縄県の一村と愛媛県の一村のみの検討であり一概に論じこめるには慎重でなければならないが, 沖縄県の血圧高値者の割合は以前に考えられていたよりも増加している可能性がある. また, それにもかかわらず, 沖縄県では健康問題における血圧の比重が軽く認識されている可能性がある.
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