健診で心電図検査を行うことにより、不整脈、心筋の異常、心筋虚血の可能性など多様な情報が得られ、心疾患の早期発見と治療につながりその意義は高い。一方心電図は心臓の電気現象を反映したもので、その情報だけで病名を診断できる場合は限られる。冠動脈の危険因子の有無や胸部X線の所見が判断に重要な場合もある。また、臨床症状やその経過の情報が無く、心電図の経時的変化を見ないと診断が困難である場合もしばしば経験する。そのため、心電図の判定では、心電図波形の判読とともに医療面接や診察、心電図以外の検査の情報を加味した上での判定が望まれ、最終的には専門医による確認が不可欠である。
このような状況下において総合健診受診者の信頼を維持していくためには、行われる心電図検査が信頼される水準にあることが施設には求められる。そのためには施設内部の精度管理はもとより外部精度管理に参加することで自施設の水準を確認することが重要である。しかし心電図判定をだれが どのタイミングでするのか、判定結果をどう健診結果に反映させるのかなど各施設によっての状況の違いもあり、その精度を評価する方法には課題もある。本稿では心電図精度管理をとりまく問題点や課題について述べてみたいと思う。
また、心電図に対するコンピューターの深層学習の応用が近年進歩しており本稿でもいくつか紹介したい。たとえば、洞調律時の心電図から発作性心房細動に罹患しているかどうかを判別する研究がなされ感度82%、特異度83%と報告された。また、同様に心電図から左室駆出率の低下を予想するモデルも報告されている。このように従来正常心電図と判断され終わっていたものから疾病の予防に踏み込むことが可能となる研究はまさに予防医学の理想であり、今後健診の重要性をさらに高めることにつながっていくものと思われる。
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