抗けいれん剤服用者242例中, 高γ-GTP血症を呈した40例を対象に, γ-GTP値の変動とそれにかかわる諸因子について, その経過を後方視的に観察した. 次にコントロール9例, 抗けいれん剤服用者38例に対してアンチピリン試験を施行し, 肝のマイクロゾーム酵素活性の指標であるアンチピリン半減期を算出し, その両面から抗けいれん剤による血清γ-GTP上昇の意義について検討を加えた. その結果, 以下の結論を得た.
1) 高γ-GTP血症はPHT服用例で高率に認められた (PHT服用例67例中31例 (46.3%), PHT非服用例175例中9例 (5.1%) ).
2) 血清γ-GTPの最高値の比較でも, その値はPHT服用例で有意に高値であった (PHT服用例111.7±46.6IU/l, PHT非服用例78.9±10.9IU/l).
3) 高γ-GTP血症を呈した40例中17例において, AEDの減量, 変更なしにγ-GTP値の正常化を認めた.
4) AED服用例のほとんどにAPt 1/2の短縮, すなわちMEAの亢進を認めた.
5) PB, PHT, CBZの服用においては, その単剤の常用量で, 肝のマイクロゾーム酵素は最大に近い誘導を受けることが示された.
6) AED服用例における血清γ-GTP値とAPt 1/2との間には相関が認められなかった.
7) 血清γ-GTP値はMEAの適切な指標とはいえない.
8) AEDによる血清γ-GTP値のみの上昇は肝細胞障害を示すものではなく, それゆえAED服用者が高γ-GTP血症を呈しても, 原則的には, AEDの減量や中止, あるいはほかのAEDへの変更の必要はないと考えられた.
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