われわれは, 昭和58年6月から昭和63年8月までの間に昭和大学泌尿器科を受診し, 生検により組織学的に前立腺癌と診断された44名に対し, PAP, γ-Sm, PAを治療前および治療後に経時的に測定した.そして治療経過中におけるそれらの測定値が治療効果の評価に有用であるか否かをわれわれの作成した前立腺癌の臨床効果判定基準1) に基づいて検討した.結果, stage別にみた場合, stageA, Bのlow stage群では, PAP, γ-Sm, PAは, 改善群, 不変群, 悪化群ともに有意な変動は認められなかった.stageCでは, PAP, γ-Sm, PAともに改善群, 不変群において有意な低下をみたが, 悪化群では有意な変動は認められなかった.stageDの改善群では, PAP, γ-Sm, PAともに有意な低下をみたが, 不変群, 悪化群では症例不足のため評価できなかった.次にPAP, γ-Sm, PAの治療前値を正常値群, 異常値群とに分けた場合についてみた.治療前正常値群では, PAP, γ-Sm, PAは, 改善群, 不変群, 悪化群ともに有意な変動は認められなかった.治療前異常値群では, PAP, γ-Sm, PAともに改善群において有意な低下をみたが, 不変群では, PAP, PAにおいて有意な低下をみ, 悪化群ではともに有意な変動は認められなかった.よつて, low stageの症例では治療前値が低いものが多く, 経過の観察追跡には臨床所見も充分に追跡することが重要であり, また, high stageの症例では, 臨床効果の改善とともにPAP, γ-Sm, PAのいずれも低下し, 治療経過をみていく上で有用である.
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