鶏雛にestrogenを日量0.4mg 10日間継続投与した場合における血中vitellin濃度の上昇する程度に大きな個体差がみられるが,それを反応回帰式として表現し,その分布状態についてしらべてみた.
使用した鶏は白色レグホーン60日令雛で,雌7群(358羽)雄5群(180羽)である.
得られた結果は次の如くである.
1. 雌雄ともに反応回帰係数(b)と恒数(k)との間に一定の傾向を持つた回帰がみられ,各群ともその回帰に沿つた個体の分布がみられる.すなわちbの小なる程kの値は大きく,bの増加に併ないkは減少する.
2. 各群別に考えた場合,雌ではb-k回帰係数間に有意差がみられ,雄では差がみられなかつたが,恒数kの平均値に関してのb-k回帰線の位置的差異が雌雄ともにみられた.
3. 反応回帰係数(b)又は恒数(k)の値にかかわりなく,反応出現日数の早晩によつて選抜支配したその仔についてみると,反応出現の早い個体同士の交配(P交配),晩い個体同士の交配(N交配)の仔において,雌雄ともにP交配Group, N交配Group間に反応回帰係数(b)の平均値に差がみられ,恒数(k)については差がみられず,P交配の仔はbの値の大なる方に,N交配では小なる方に個体の集結する傾向がみられ,bについてはかなり遺伝的な要因が強く働く事が示唆された.
4. 反応回帰係数(b)についてP交配,N交配の如き条件にない無作為交配で得られた4群を用いて分散分析を行い,又一方では親子回帰(Mid-Parentに対する仔の回帰)によつて大凡の遺伝力の推定を行つてみた.分散分析によつて得られた結果ではh
2s+D=0.480±0.052,親子回帰による結果ではh
2=0.651±0.236となり可なり遺伝力は高いものと思われた.
5. 反応回帰係数(b)は雌の場合,正規性を示す分布がみられるが,雄では正規性を示さない.従つてbに関しては性差を考慮して取扱う必要があるものと考えられる.
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