飼料中のリジン含量の相違による屠体分析結果のうち,蛋白質の蓄積割合の差を生化学的手段で解明するため,体内蛋白質代謝に重要な位置を占めるtransaminaseを選び,飼料中リジン含量の異なる飼料を給与したひなの肝臓中のGlutamic-Oxalacetic Transaminase (GOT)とGlutamic-Pyruvic Transaminase (GPT)について,細胞中ミトコンドリア分画局在のものと,上清分画局在のものとに分け,リジン欠乏のはげしい0.76%区,リジンがわずかに欠乏している0.91%区,リジンが要求量を満している1.01%区について,それぞれの活性変動を測定する実験を行なった.
ゴマ粕とサフラワー粕を主蛋白質源とするリジン欠乏飼料に,L-リジン塩酸塩を段階的に添加した飼料を7日令から21日令まで給与した結果,飼料中のリジン含量の増加に相対応して,増体量,飼料要求率も良くなった.
一方,上清分画局在の酵素であるGOT, GPTはリジン欠乏により著明な活性上昇は示さなかった.しかし,ミトコンドリア分画局在の酵素であるGOT, GPTは活性が上昇していることを示した.
肝臓組織の酸素消費量は,飼料中のリジン含量が異なっていてもほぼ同じような傾向を示し,ほとんど差はみられなかった.しかし,体重当りの飼料摂取量の値でメタボリックボディーサイズ(B. Wt.
0.75)当りの酸素消費量を除した場合,0.76%区,0.91%区,1.01%区の各々の回帰係数の間には1%有意水準で差が認められ,リジン欠乏のはげしい場合には基準単位当りの酸素消費量は多く,リジンがわずかに欠乏している場合には酸素消費量は少なかった.
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