ゼフィラミン存在下でのクロムアズロールS(CAS)によるベリリウムの吸光光度定量において,吸光度は陰イオン濃度の増加とともに減少する.そして,見掛けの錯体生成反応の平衡定数
Kappの値は,陰イオン濃度の増加とともに減少する.しかし,pH5~5.7では,吸光度は陰イオン濃度の増加とともに増加し,約0.15 mol dm
-3以上でほぼ一定となった.これは,吸光度に対するベリリウム(II)の加水分解による負の影響であるが,陰イオンの添加によりその影響が相殺されたものと考えられる.このように,見掛けの錯体の生成反応に陰イオンが大きな影響を及ぼすのは,CASの見掛けの酸解離定数
Ka3'の値が,陰イオン濃度の増加とともに減少するためと考えられる.0.15 mol dm
-3以上の陰イオンの存在下で,
Kappの値は塩化物>硫酸塩,
Ka3'の値は硫酸塩>塩化物,錯体の吸光度は塩化物>硫酸塩の順であった.ベリリウム定量の際は,共存陰イオンの種類と濃度は,ほぼ等しくする必要がある.
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