WPS(Warwick Process Science)とは、英国の中等学校の理科カリキュラムの一つである。筆者らはこのカリキュラムの意図するところを明らかにするとともに、我が国の理科教育に役立つ知見を得るために、新たに制定された英国National Curriculumと関連した学習内容や指導方法、評価方法について調べてみた。その結果次のようなことがわかった。(1)WPSは生徒に「問題解決能力」を身につけさせるために、6つの基本的プロセス(観察・推論・分類・予想・条件制御・仮説)の学習から始め、しだいに統合されたプロセスを経て複雑な段階へと学習が進むように意図されている。(2)6つのプロセスの中では、「推論」が最も重要で中心的な位置を占めている。そのためWPSの数多くの学習活動は、個々の生徒の作り上げた推論を検証するという形になっている。(3)WPSでは形成的評価を強調し、基準に準拠した評価方法を採用している。これはNational Curriculumとも一致したものである。(4)実際的な学習活動のある多くのモジュールから構成されたカリキュラムは、日常生活や社会生活、産業界、技術界と関連づけられている。それらは最近叫ばれているいわゆるSTS教育に通じるものである。(5)各モジュールは様々な分野に及びどれも学習内容と問題場面、問題解決のためのプロセスの三者のバランスに配慮がなされている。そのため中等学校の理科の教師はだれでも、自分の好みで教材を選択し使うことができる。
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