五感の活用を重視したセンサリー・マーケティングの効果や影響は，消費者行動研究を中心に多くの議論が進められてきた。近年では，多様な視点から検討が進められたことにより，同一の刺激が異なる消費者反応を生じさせる状況や条件も明らかにされてきている。こうした点を踏まえると，企業がセンサリー・マーケティングを効果的に活用するには，センサリー・マーケティングの効果や意義を十分に把握し，様々な状況や条件を考慮して自社の狙いや方針に合った施策を立案できることが重要である。しかしながら，先行研究を確認してみると，企業側のセンサリー・マーケティングへの意識や考えに注目した議論は取り組まれていない。そこで本研究では，我が国の有力小売企業10社の経営者および経営幹部にインタビュー調査を実施し，彼らがセンサリー・マーケティングに対して抱いている意識や考えを探索的に検討した。インタビュー調査の整理からは，経営者が考えるセンサリー・マーケティングの重要性，センサリー・マーケティングの活用方針，センサリー・マーケティングに期待される効果，センサリー・マーケティングを成果に結びつけるための要因が明らかにされた。

消費者が使用するデバイスの多様化とともに，デバイスが消費者行動に及ぼす影響に注目が集まっている。本研究では，デバイスの違い（スマートフォン／PC）が消費者の解釈レベルに及ぼす影響を検討するとともに，デバイス特性と解釈レベルの一致が，消費者の評価や行動に及ぼす影響について検討する。本研究では3つのオンライン実験と，1つのフィールド調査を通した検証を試みる。研究1では，スマートフォン（vs. PC）で対象を見たとき，消費者はその対象をより近いと知覚することを明らかにする。研究2では，スマートフォン（vs. PC）を使用した場合，消費者の解釈レベルが低次になることを確認し，研究3では，スマートフォン（vs. PC）の使用が，低次の解釈レベルに対応した広告の評価に正の影響を及ぼすことを確認する。最後に研究4では，実際の購買データを分析することで，研究1～3で得られた知見の実務への応用可能性を検討する。

ふるさと納税は，問題点を抱えているものの，着実にその規模が拡大している。一方で，ふるさと納税に関する研究は，その実態把握研究が大半であり，特に利用者研究は限定的な理解に留まっている。本稿では，まずふるさと納税を寄付型および報奨型クラウドファンディングとして理解し，利用者がふるさと納税を行う要因を検討する。次に寄付者が寄付を行う要因を検討する。さらにふるさと納税の返礼品を寄付つき商品と理解することでコーズ・リレーテッド・マーケティング研究を通じ，消費者が寄付つき商品を購入する要因を検討する。最後にふるさと納税の利用者を理解する枠組みを提示し，地方自治体のマーケティングへの示唆を述べる。

本研究では，これまでのブランド構築を踏まえて，これから一層進展していくデジタル時代におけるブランド構築について考察し，企業と消費者との価値共創に対して，これまで見過ごされていたブランド構築に寄与する第三の主体であるBIT（Brand Incubation Third-party）を交えたブランド価値協創（collaborative creation of brand value）を提唱する。そして，3主体によるブランド価値協創においては，経済的関係性を超えた社会的関係性を示す概念であるブランド・エンゲージメント（brand engagement）が重要であることを提示する。

Purpose: This study examines the research question, “Why does the A-Tail-Wags-the-Dog phenomenon occur following the success of international joint ventures （IJVs）?” The case study considers the IJVs between Nippon Paint （NP）, a leading Japanese paint company and Wuthelam Holdings （Wuthelam）, a Singaporean entrepreneurial firm. The first IJV was established in 1962 in Singapore and later expanded throughout Southeast Asia and China.

Design/methodology/approach: The changes in the power situation between partners over 50 years are qualitatively analyzed through the “Resource Dependence Perspective” （Pfeffer and Salancik, 1978; 2003） and the subsequent effects of their ex-ante conditions.

Findings: Notably, NP, a 40%-owned minority shareholder, provided resources including manufacturing and quality-control technologies, R&D, brands and raw materials for paint exports to the IJVs. Wuthelam, a 60%-owned parent, was responsible for the management, production, marketing, sales and financing. Through these interdependent relationships, the IJVs grew to attain the No.1 market share by the early 2000s in both markets, owing to Wuthelam’s competent management. In 2006, NP initiated negotiations with Wuthelam to consolidate all IJVs, and concluded by acquiring additional 11% shares of only eight IJVs in 2014. Consequently, NP became a 51%-owned parent of these eight IJVs by allotting nearly 40% of its common stocks to Wuthelam through a stock swap scheme; making Wuthelam the controlling shareholder of NP. Subsequently, to prevent future attempts to unseat Wuthelam, as in 2017, Wuthelam exerted legitimate power to become a 60%-owned parent of NP by exchanging all the remaining shares of all IJVs that it owned for an additional 20% of NP common stocks in 2020.

Originality: The relationship between the IJV partners evolved into “A-Tail-Wags-the-Dog” rare in the history of Japanese companies.