実験動物における系統間の特性を明らかにする目的で, 約90~120日令の雌マウス7系統 (CFW, CF#1, C3H, C57BL, SS, AA, KK) を用いて排卵数, 産子数について比較検討を行なった。
えられた結果は次のものである。
1.各系統における左
卵管膨大部の卵数と右卵管膨大部
の卵数を比較したところ, 左, 右間で有意差はえられなかった。
2.左, 右
卵管膨大部
の合計卵数について系統間で比較したところ, 排卵数の多い系統としては, CFW, CF#1, SS系があり, これらの系統の平均排卵数は11~13ケの範囲にあった。中位の排卵数を示した系統としてはC3H, AA, KKがあり, これら系統の平均排卵数は10.0~10.7の範囲にあった。また, 排卵数の少ない系統としてはC57BLがあり, 排卵数の平均は8.8であった。平均排卵数についてはCFWとC3H, C57BL, SS, AA, KK間に, CF#1とC3H, C57BL, SS, AA, KK系間で, SSとC57BL間に有意差がえられた (p<0.05) 。
3.同一系統内における体重と排卵数 (左, 右
卵管膨大部
における卵数の合計) の相関関係はえられなかった。
4.産子数について系統間で比較したところ, 産子数の多い系統としては, CFW, CF#1で, その平均は10~12匹であった。中位の系統としてはSS, AA, C57BLで, その平均は, 7.4~7.9の範囲にあった。産子数の少ない系統としては, C3H, KKで, 平均は4.7~5.2の範囲にあった。平均産子数についてはCFWとC3H, C57BL, SS, AA, KKの間に, CF#1, C3H, C57BL, SS, AA, KKの間に, C57BLとC3H, KKの間に, SSとC3H, KKの間に, AAとC3H, KKの間に, それぞれ有意差がえられた (P<0.05) 。
5.産子率 (排卵数を100としたときの産子数の割合) について系統間で比較したところ, 産子率の高い系統としてはCFW, C57BLで84~93%を示した。中位のものとしては, CF#1, SS, AAで70~77%, 産子率の低い系統としては, C3H, KKで43~50%を示した。
6.以上の結果から, 系統によって排卵数と産子数は必ずしも平行関係になく, 産子数の決定において, 排卵数の果す役割の程度が系統によって異なることが明らかにされた。
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