真空蒸着法により,サファイヤ,溶融石英およびアルミニウム基板上に作成した厚さ1100Åの鉄薄膜を出発物質として,これを酸化,還元および緩酸化することによりγ-Fe
2O
3連続薄膜を作成した。酸化は酸素雰囲気中400℃ で行ない,還元はメタノールを室温で飽和させたアルゴン雰囲気において320~400℃ で行ない,また緩酸化は大気中210~300℃ で行ない,処理条件と合成膜の特性との関連を求めた。酸化および還元後の膜はおのおのα-Fe
2O
3およびFe
3O
4の連続膜であり,緩酸化の条件を変えることによってFe
3O
4-γ-Fe
2O
3中間酸化状態の各段階における膜を作成することができた。合成薄膜の保磁力はFe
3O
4およびγ-Fe
2O
3では約250Oeであったが,中間酸化状態ではいちじるしく増大し,Fe
2+とFe
3+ の割合が0.1の近傍で1000Oeを越える膜を得ることができた。高い保磁力を有する膜は中間酸化状態で安定であり,同状態の微粒子において報告されている保磁力の経時変化ゆりは認められなかった。作成したγ-Fe
2O
3薄膜は,厚さが約2900Åであり,表面には深さ約450A,む周期約1000Åの起伏が見られたが,膜の表面を機械的に削り取ることが比較的容易にできるため,きわめて平滑かつ緻密な新しい表面を形成することができた。膜の作成過程における平均結晶粒径は,ゆくひゆくきむFe:280Å,α-Fe203:380Å,Fe304:340Å,γ-Fe
2O
3:270Åであり,膜厚は蒸着鉄が1100Aであり,酸化後は約2900Åとなりその後の処理では目立った変化は認められなかった。また本報告では実験結果の再現性を確保するために,薄膜の作成法および使用した装置についてはとくに注意し,主要部分のデータを示した。
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