第二次世界大戦後の1946年から1995年までの50年間に日本本土に上陸して被害を与えた113の台風を対象とし,中心気圧深度,最大円形等圧線半径,時刻,地域,年代などを独立変数とする被害算定式を導き,時刻などの定性的要因が被害規模に与える影響度を求めた.ついで,単位台風勢力あたり被害高(被害度)の経年変化の趨勢から,戦後における災害環境の変化,防災対策の効果などについて考察した.深夜上陸台風は, 1940~50年代には朝・昼・夕の時間帯に上陸した台風に比べ5倍程度の死者をもたらしていたが,近年ではこの時刻差は非常に小さくなってきている.人的被害度は,防災対策の大きな進展が始まる以前の1960年ごろを境に急減し,その後はわずかな低下にとどまっている.一方,家屋損壊被害度は一貫した低下の趨勢を示す.家屋浸水被害度は低湿地の市街地化の進展などを反映して,長期間ほぼ一定値を保った.金額表示の公共土木施設被害度は1970~80年代に急増したが,これは高度成長期における公共投資額の著しい増大に並行した推移を示す.
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