本稿は,都心部の形成過程を通じ,最近の日本の都市で急速に進んでいる立体化について,とくに中高層建造物を中心に考察したものである.その結果,都市の機能分化は,従来の平面的機能分化以外に,その内部において立体的な機能分化を内包していることが判明した.すなわち,都心部では,物品販売・社交娯楽機能は地下1階~地上2階を中心に立地し,地下街とも有機的に結合している.地下2階以下は,主に駐車場や倉庫にあてられ,高層部分は業務・居住厚生機能の利用が多い.また,地下鉄など交通機関の立体化は,高層建造物の増加と関連が深く,さらに地下街も地下鉄や高層建造物の地下階の建設にともなって誕生した場合が多い.都心部の立体化は,これらのコンプレックスとして把握されねぽならないと考えるが,ここではとくに重点を中高層建造物において考察し,都心研究における立体的視点の重要性を示した.
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