目的:自らの意思決定が可能な地域住民を対象とした,邦訳版アドバンス・ディレクティブ(Advance Directive;AD)知識度尺度と態度測定尺度の信頼性・妥当性とわが国での活用可能性を検討する.方法:研究対象者は,A市S区の老人会会員104人である.研究方法は,無記名自記式質問紙調査であり,調査項目は,Murphyらが作成した尺度の邦訳版AD知識度尺度10項目,AD態度尺度13項目と基本属性基準関連妥当性検証を目的とした質問項目「ADについて聞いたことがあるか」「AD作成者を知っているか」「家族の看取り・介護経験の有無」「家族と終末期について話した経験の有無」「過去の大病・手術歴の有無」の5項目,合計28項目である.結果:回答者は102人(98%),平均年齢は74.9±6.6歳,男性,女性共に51人であった.I-T相関係数0.3以下の項目を削除した結果,AD知識度尺度は8項目,最小値2点〜最大値8点,平均は5.6±1.9点,AD態度尺度はll項目,最小値1点〜最大値11点,平均は7.5±3.2点であり,両尺度共に分布の正規性が認められた.尺度全体のCronbachのα係数は,AD知識度尺度が0.67,AD態度尺度は0.86であった.基準関連妥当性の検証では,AD知識度尺度で「過去に大病・手術歴がある」の1項目,AD態度尺度では「ADについて聞いたことがある」「過去に大病・手術歴がある」の2項目において外的基準項目との間に関連が認められた.結論:邦訳版AD知識度尺度と態度尺度は,一定の信頼性・妥当性が検証されたが,今後も関連尺度を精査し併存妥当性の検証も含め,わが国の現状により合致させるために精査を続けていく必要がある.
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