本研究は, 社会基盤整備の合意形成に交渉学的手法を適用することで, 新たな合意形成システムの構築に向けて示唆を得ることを目的とする. 近年, 社会基盤整備をめぐる対立や衝突は社会的関心を呼び, 次第に市民参加や合意形成の必要性が認知されてきたが, 制度的枠組みや技術的支援手法は未だ十分に確立されていない. 本研究では, 交渉スタイル, 戦略, 戦術を道路整備事業に適用し, プロセスに内包する問題について考察した. その結果, 県と住民は立場駆け引き型交渉を繰り返すなかで対立し, 特に県は自らが主張する基準を用いて住民を説得し感情的衝突を引き起こしているといえ, 当事者双方が認める基準 (客観的基準) を用いた交渉への転換が示唆された. 更に, 現場では当時者のみでは客観的基準の導出は困難といえ, 第三者支援による原則立脚型交渉が合意形成システムのあり方として示された.
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