本地域では, 5~12世紀のころ,地形を中心とする地表景観の人為的改変が著しく進行した.その代表的なものとして, (1) 丘陵地斜面や段丘崖を中心に広く点在する須恵器の察, (2) 丘陵地の尾根付近や高位段丘面を選んで立地する群集墳, (3) 中・低位段丘面に,多量の土砂を移動させて構築された前方後円墳と方墳, (4) 段丘面およびその開析谷,谷底平野などの一部を堰き止めて造られた大小の溜池, (5) 低地の水を段丘面に導くため,築堤と開削を行なって敷設された巨大な溝渠,および (6) 段丘面から低地にかけて広く展開する条里型土地割などがあげられる.これらのうちのあるものは,今なお原形に近い姿をとどめているが,他のものはその後における複雑な地殻変動や河川の侵食・堆積作用のほか,河川改修,築城,土砂採取,耕地の区画整理,道路建設,住宅地開発などのような人為的作用によって著しく改変されており,消滅してしまったものも多い.
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