新しく開発されたペネム系経口抗生物質SY5555について, 基礎的ならびに臨床的に検討を行い, 以下の結果を得た。
1. 基礎的検討: 各種臨床分離菌12菌種280株を用いて, SY5555およびセフェム系経口抗生物質cefaclor (CCL), cefotiam (CTM), cefixime (CFIX), cefteram (CFTM) とカルバペネム系抗生物質imipenem/cilastatin (IPM/CS) との抗菌力を比較した。SY5555は他の経口セフェム系抗生物質4剤と比しmethicillin-susceptible
Staphylococcus aureus (MSSA),
Streptococcus pneumoniae, Streptococcus milleri group,
Enterococcus faecalis, Enterobacter cloacae, Acinetobacter calcoaceticus, Mloraxella (Branhamella) catarrhalisに対し最も強い抗菌力を示した。また,
Escherichia coliを除く菌種に対しCTMより同等以上の強い抗菌力を示した。しかし, SY5555は,
S. pneumoniae, E. faecalis, Haemophilus influenzaeを除いてIPM/CSより抗菌力が弱く, methicillin-resistant
S. aureus (MRSA),
Serratia marcescenes, Aeudomonas aeruginosaに対する抗菌力も弱かった。
2. 臨床的検討: 呼吸器感染症12例 (肺炎4例, 慢性気管支炎4例, 急性気管支炎4例) に対してSY5555 (150~300mg) を1日3回投与した。臨床効果は, 著効1例, 有効10例, やや有効1例であり, 91.7%の有効率を示した。副作用は認めず, 臨床検査値異常変動はGOT, GPTの上昇が1例, GPTの上昇が1例に認められたが, いずれも軽度であった。
以上のことから, 本剤は呼吸器感染症に対し有用な薬剤であると考える。
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