心の発達を心理学でなく,筆者の臨床体験から得た「体,特に感覚(触覚)に基本においた心の発達」とした図示仮説を紹介した.現代は「心の時代」「心の教育」と,心の
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をしているが,「体(触覚)を忘れた/実感しない成長が心を失った」という視点が欠けていると考える.そして,社会で最も求められる「表現」「自信・自尊心」「認知」「対人関係」という能力が,乳幼児期の母子関係で育つと論じ,これを損なう物の豊かな時代,65年続く戦後教育,特に最近のフェミニズムイデオロギー(わが国では和製英語でジェンダーフリーと称している)の危険性にも言及した.また,成人は子どもが成長した結果と考え,成人を診る医師に子ども時代の重要性を認識してほしいと希望を述べた.
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