おおよそこの30年間に,世界の経済や企業経営において顕在化してきた変化は,単に経済領域のみならず,政治,社会,宗教等…の多くの領域と密接かつ錯綜しながら今日に至っている。この変化は,まさに「新しい資本主義の現実」であり,それに対峙して企業の「経営者の意識」が今,まさに問われている。
この変化を一言で言うならば,従来の「東・西・南・北の軸」の崩壊による「多極的な世界構造」の出現であり,このような状況に直面して新しい「構造」への対応を企業(と経営者)が問われている。
そのためには,“蛇が脱皮をするように”状況に合わない衣は脱ぎ捨てなければならない。ただ,日本企業にとって悩ましい問題は,その強みであったいわゆる従来の「泥臭い摺り合わせ」文化のいくつかが現状にそぐわなくなってきていることである。ここに,日本企業と経営者が抱えるアンビバレントな課題が生じている。
そうした課題に対する完全な特効薬を提示することは難しいが,いくつかの問題提起を行っておきたい。そこで,経営者の意識として,まず今の「多極的かつ流動的な現状」を身をもって認識する必要があり,そのためには従来からの“古い衣(意識)”を捨てる意識が不可欠である。それによって,新しい「経営資源の組み合わせ」による新しい構造が見えて来よう。すでにいくつかのケースが現れ始めている。こうした新しい試みを「夢と理念と覚悟」を持ってやり抜く経営者が今求められている。
抄録全体を表示