【目的】
本研究の目的は,気分プロフィール検査(Profile of Mood States, POMS)による,スポーツ選手のコンディション評価の可能性と問題点について検討することである。
【方法】
高校サッカー部に所属するサッカー部員111名(16.3±0.9歳,15-18歳)を対象とした。対象者は監督・コーチにより競技レベル別に4群(A: 29名,B: 24名,C: 37名,D: 21名)に分類した。
これら対象者に検査時1週間前から続く慢性外傷(障害)の有無, POMS検査を実施した。POMS検査は2回実施し,1回目の検査は質問紙の回答に慣れるための予備調査とし,2回目の検査結果を分析対象とした。POMS検査の結果は,総合得点Total Mood Disturbance(TMD),POMS検査の構成因子である緊張・不安(Tension-Anxiety, T-A),抑うつ・落ち込み(Depression, D),怒り・敵意(Anger-Hostility, A-H),活気(Vigor, V),疲労(Fatigue, F),混乱(Confusion, C)の6尺度の項目に分類し尺度ごとの得点を算出した。
TMD,T-A,D,A-H,V,F,C,について競技レベルおよび障害の有無別に比較・検討した。競技レベル別比較は一元配置の分散分析およびBonferroniの多重比較検定,障害の有無とPOMSの各得点の比較は対応のないt検定を行った。統計解析はSPSS11.5Jを用い危険率5%未満を有意とした。
【結果】
対象者111名のうち障害有りは72名,障害無しは39名であった。各検査項目の全体の平均はTMD140.20±33.10,T-A12.76±6.05,D12.07±10.90,A-H10.03±7.48,V14.94±6.81,F10.24±6.82,C10.04±4.48であり,スポーツ選手にみられるV尺度を頂点とする氷山型を示した。
競技レベル間の比較では,POMSの各得点のうちTMD(F=2.72)とT-A(F=3.34),D(F=4.04),V(F=4.25)の3尺度で有意差が認められ,V尺度得点はA群で最も高得点を示し,次いでB,C,D群の順であった。障害の有無別POMS得点の比較では,全体および競技レベル間ともに有意差は認められなかった。
【考察】
以上のように,障害の有無にかかわらずPOMSの各得点は全体的に良好な傾向を示し,特に競技レベルの高い群でその傾向が強かった。POMS検査によるスポーツ選手のコンディショニング評価では,競技レベルを考慮しさらに対象者個々の継時的変化をモニタリングすることが必要である。
抄録全体を表示