このたびの東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに,被災された方々が1日でも早く復興されることを祈念いたします.
東日本大震災が発生して約1年半が経った現在,様々な問題がまだあるものの,復興に向けての活動が進められている.
災害は,再び起こる可能性をもっており,事故等のように再発防止策をとることができない.したがって様々な教訓を記録しておき,人的にも物的にも被害を最小限に抑え,災害の発生に備えることで対応することが重要と考える.
まだ復興の途上ではあるが,今回は,悪臭問題を中心に東日本大震災の発生直後からその後の対応等について特集し,今後の災害発生に際しての資料として活かしていただけたらと考える.
本特集にあたっては,行政的な面から自治体の方2名と調査,対策等の技術面で2名の方にご執筆頂いた.
安倍氏
(宮城県環境生活部環境対策課)には,「東日本大震災による被災地の環境・衛生の確保への取組」という題目で執筆していただいた.本稿では,震災の発生は,悪臭だけでなく,アスベストはじめダイオキシン類,有害大気汚染物質等の大気汚染の問題も発生すること,また震災発生後の廃棄物処理においても大気汚染の問題を考慮することの重要性が述べられており,建物の破損,解体工事等通常とは異なる状況の中で,大気モニタリングをおこない,情報を各方面に素早く周知することが重要であることがうかがえる.
古澤氏,小澤氏,菊池氏(岩手県沿岸広域振興局宮古保健福祉環境センター)には,「災害廃棄物処理に係る悪臭対応等を含めた現地機関の取り組みについて」という題目で執筆していただいた.
廃棄物処理についても,廃棄物だけの問題ではなくそれに付随する悪臭,害虫の発生,火災対応等様々な問題が発生することが,本稿よりよくわかる.特に現地機関として問題に直面されていることもあり,記述されている内容は大変具体的であり,貴重な内容である.
加えて,災害発生時からの廃棄物の処理について,適宜各種通知を織り交ぜて時系列に記述されており,行政面での対応と合わせて理解していくことができる.
行政面では,情報の周知,共有化等「つなぐ」,「連携」という言葉がキーワードになってくるのではないかと考える.
樋口能士氏(立命館大学理工学部),樋口隆哉氏(山口大学大学院理工学研究科),祐川英基氏(祐川環境カンファレンス㈱),村上栄造氏(㈱朝日工業社),増田淳二氏(大阪市立環境科学研究所)には,「東日本大震災における被災地の臭気問題に関する現地調査」という題目で執筆いただいた.
本稿においては,現地での詳細な調査をもとに,臭気の発生状況およびその対策について述べられている.特に地域ごとの臭気の発生状況は,大変興味深い内容と考える.被災地での悪臭は,魚介類等に起因する腐敗臭が主であるが,その他に燃料油タンクからの油臭,廃棄物からの硫化水素数等,詳細な現地調査を実施しないと得られない知見である.
また,施設ごとに整理された対策方法も今後の対応に大変参考になるかと考える.
最後に本協会の震災対応について「東日本大震災の津波被災地における悪臭対策支援に関する報告」という題目で報告させていただいた.
震災発生直後においては支援物資の提供,その後は,現地での視察,アドバイスを含めた情報発信,さらには技術的な支援と状況に応じて必要とされる支援の内容が,異なってくることが分かる.被災地で求められていることが何であるかを把握した上で,タイムリーにその求めに対応することが重要であることがわかる.
復興に向けての活動が進んでいる中,まだまだ多くの問題が存在している.特に現時点では,物質的な内容に加え,被災者の方々のメンタル面での問題の解決も重要になってきている.このような状況の中で,今後どのような支援ができるのかを考えていきたい.
最後になりましたが,本特集を企画するにあたり,ご多忙中にもかかわらずご快諾いただいた著者の方々に,本紙面を借り深く感謝申し上げます.
特に
安倍氏
(宮城県環境生活部環境対策課),古澤氏,小澤氏,菊池氏(岩手県沿岸広域振興局宮古市宮古保健福祉環境センター)には,復興業務のご多忙の中,ご執筆頂き深く感謝申し上げます.
抄録全体を表示