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クエリ検索: "宮城県仙台西高等学校"
8件中 1-8の結果を表示しています
  • *山内 洋美
    日本地理学会発表要旨集
    2022年 2022s 巻 S303
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/28
    会議録・要旨集 フリー

    1.はじめに

    2022年度から高等学校で必履修となる「地理総合」.その学習指導要領改善・充実の要点において,「世界で見られる自然災害や生徒の生活圏で見られる自然災害」についても取り扱うと明示された.「地理総合」には,中単元C 持続可能な地域づくりと私たち (1)自然環境と防災 といった,「防災」と明記された単元が存在するが,それだけでなく「地理総合」全体に,地理的見方・考え方に基づいた小中高の防災学習のまとめとしての役割が付されたと考えてよいだろう.

    そこで,発表者が頂いたテーマである,中高社会系教科における防災学習のつながりと到達点を,おもに「地理総合」の防災学習の到達点と中学校教科書の記述の係わりから考えてみたい.

    2.高等学校「地理総合」における「防災」に係わる学習の到達点

    「地理総合」において重要な観点の一つに「持続可能な社会づくり」がある.東日本大震災を経験した発表者は,この10年で存続が困難な集落や地域をいくつも垣間見た一方で,新しい形で集落や地域を存続させる努力も多く拝見した.その背景は非常に複雑で、直接的な地震・津波等の被害の大小とは必ずしも関わらない.

    だからこそ,「持続可能な社会づくり」を論じるにあたって,前述「地理総合」改善・充実の要点にある通り,「災害を引き起こす自然現象(ハザード)と社会的な脆弱性との関係が災害の規模に反映されることや,その両者の関係を踏まえて地域の防災の在り方を考察することの重要性を理解」できるような学びが「地理総合」でなされることが望ましいと考える.ただハザードから一時的に逃れるための知識を手に入れるだけでなく,対象地域のもつ独自の地域性を大切にし,その場所に(持続的に)暮らし続けるための「防災」であるからだ.

    3.中学校社会科地理的分野における防災に係わる学習の課題

    中学校社会科地理的分野の学習指導要領においては,「日本の様々な地域の学習における防災教育の重視」が改訂の要点の一つである.それを踏まえて,九州地方の火山災害,中国・四国地方の水不足とため池,近畿地方の都市における地震の被害,関東地方の氾濫原における都市化と水害,東北地方のやませによる冷害やリアス海岸による津波の増幅,北海道地方の火山災害が全4社の教科書で挙げられている.一方で,中部地方の北陸における豪雪被害や平野部の梅雨による洪水,東北地方の東日本大震災に伴う原発事故の被害,北海道地方の雪害など地域性を反映した事例は一部の教科書にしか載っていない.また,北海道地方で最も発生が多いゲリラ豪雨が関東地方の東京周辺で多いことになっているなど,地域の特徴を反映した記述とは必ずしもいえない.

    そして最大の課題は,教科書会社4社すべてで取り上げている概説としての気象災害と地震・火山災害については現象と被害の概説のみで,その偏在とその要因との関係について具体的に触れていないことである.つまり,土砂災害はどのような状況でどのようなところで起こりやすいのか,また河川氾濫の被害が大きい地域の地理的な特徴は何か,といったつながりが本文からは読み取れず,知識や用語が細切れになってしまいかねない.結果,教科書の事例を,日本や世界の他地域の自然環境や社会環境に重ねて考えることが難しくなる.

    そうすると,「地理総合」で改めて系統地理的な自然環境に関する知識を授けなければ中単元Cは扱えないと考える高校教員が増えることは明らかだ.「地理総合」5社6冊すべてで自然環境に係る系統地理的知識のページを備えているのもそのためだろう.

    4.提案

    中単元「日本の地域的特色と地域区分」において,教科書の重要語句として扱われるような自然環境と自然災害/防災の取組について,地理的見方・考え方を用いて互いに関連付ける事例を教材として,地理学者の研究成果をお借りして作成することが必要と考える.

    また,中学校社会科歴史的分野の中単元A 歴史との対話 (2)身近な地域の歴史 における地域調査を,地理的分野の防災単元の内容と関連づけて扱うことも有効と思われる.自然環境の特色を踏まえて災害を防ぐ,減衰させる視点で地域をとらえたときに感じる,なぜこのようなところに暮らし続けるのかという疑問と矛盾に向き合うときに,歴史的見方・考え方も合わせて地域を包括的にとらえることで地域のアイデンティティがみえてくるからだ.

    もちろん,小学校生活科や社会科で,行政区分としての地域にこだわることなく,児童が自らの暮らしを営み,体感として自然環境や社会環境を理解でき,その現状や将来像について具体的に表現できる「身近な地域」学習が行われていることが,中高における防災に係わる学習の最も大切な土台となる.震災とコロナ禍の影響もあり,明らかに身体的空間認識力が衰えていると感じている.

  • *山内 洋美
    日本地理学会発表要旨集
    2023年 2023a 巻 S106
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/28
    会議録・要旨集 フリー

    高等学校では2022年度から「地理総合」が必履修となり,今年度からは選択科目「地理探究」が始まった。戦後の高校地理において必修科目の上に選択科目が置かれるのは初めてと言える。

    そのようななかで今回の公開講座の対象となったヨーロッパは,「地理総合」においては,おもに国際理解と国際協力を考えるための事例地域として扱われている。一方「地理探究」では地誌的考察を行い,地域像を形成する対象地域として現れる。しかし,どちらの科目でも教科書の多くは,いずれもEUという地域統合の視点からヨーロッパを捉えている。「地理総合」で事例地域を取り上げるときに,ヨーロッパはほぼ外されないだろうから,「地理探究」の地誌的考察においては,ヨーロッパを扱うにあたって繰り返しEUという地域を扱うことになろう。つまり,EU外のヨーロッパ諸国はいつ,またどのように扱うのかということが課題になると考えられる。それはEU外のヨーロッパ諸国の存在がヨーロッパという地域を地誌的に捉え,地域像を形成するときに重要な側面をもつからだが,ブレグジットを騒ぎ憂いながら,今も昔もEU外であるヨーロッパ諸国に着目しないのはなぜか。そのような着眼点から,生徒は,他の社会系必修科目とともに「地理総合」を学ぶのだということを前提に,それらとの関連にも触れつつ,前述の課題について考えていきたい。

    発表者は,昨年度「歴史総合」,今年度「公共」の授業を担当している。生徒のほとんどが1・2年生のうちに必修3科目を履修するとして,ヨーロッパについてどのような地域像が形成されるか。

    例えば「歴史総合」では近現代のヨーロッパの歴史について学ぶ単元が広く存在する。また「公共」では,伝統・文化の単元においてキリスト教の伝播や和辻哲郎の風土論における牧場型としてのヨーロッパ観が,また功利主義や道徳法則に始まるヨーロッパ思想や,フランス人権宣言,イギリスの政治機構や冷戦体制,EUの政治統合などヨーロッパ社会のしくみを学ぶ単元が多数存在する。しかし,「公共」の授業で,「歴史総合」で学んだヨーロッパの歴史を生かすことは非常に難しいと感じる。

    それはひとつに,「歴史総合」ではヨーロッパ思想にかかわる古代から近世を扱わないこと,もうひとつに生徒たちのもつヨーロッパの地域像が曖昧で他地域との混同があることと考える。今春,「地理探究」を選択した生徒に簡単なアンケートを採った(有効回答26名)際に,ランダムに選んだ国々の地域区分を問うたところ,隣接しているが他地域に属するトルコとモロッコに関して,トルコについては半分弱が,モロッコに関しても1/5がヨーロッパ・ロシア地域に属すると回答した。このことから,「地理探究」で特定の地域を扱う際に,地域の範囲をどのような視点で区切るのか,なぜその範囲で区切るのかということを意識させることが重要だと感じた。また,「歴史総合」や「公共」においても,生徒たちの地域像が希薄であるということを前提に内容を取り扱う必要があるということを感じた。その地域像を育てるのは,本来,必修科目の「地理総合」の役目ではないかと思われるのだが,地域像を形成するのに重要な地誌的考察の単元は「地理探究」に譲られている。そこで本発表では,必修3科目の学習内容を踏まえたうえで,複雑で重層的なヨーロッパの地域像,地誌がどのような形で生徒のなかに形成されていくことが望ましいか,「地理探究」に絞って述べる。

  • *山内 洋美
    日本地理学会発表要旨集
    2022年 2022a 巻 418
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/05
    会議録・要旨集 フリー

    1.学習手法“ミステリー”の可能性と限界

     学習手法“ミステリー”とは,複数の登場人物が関わるかみ合わない複数のストーリーをバラバラにカード化し,カードを物理的に並べることで再構築することを通して,“謎”を解き,課題を解決したり,場合によってはそのほかの資料も読み込みながらストーリーの過去や未来を想定したり課題を解決しようとしたりするものである。1990年代後半にイギリスで生まれ,オランダを経由してドイツで発展を遂げた。

     例えば,イギリスの事例としてのLeat(1999)では,「なぜヴィッキーの車はロックされたか?」というオープンな(定まった答えのない)人文的事象に係る問いと,約30枚の個人の行動を中心に断片的に述べた短文からなるデータスリップと呼ばれるカード,補足資料としての新聞記事が載っている。

    課題(オープンな問い)を紹介→活動(グループ全員でカードを読み込み、机上に物理的に並べる)→課題の答えを示す→活動を評価する

     どちらかというと,人文地理学的な視点で,社会システムを構築するようなデータスリップ=カードがつくられているといえる。

     一方,ドイツの事例としてのHaß(2012)では,データスリップ=カードにはそれぞれ表題がついており,タイトルに沿った事象の説明と図表・写真等が比較的詳細に載っている。カードの枚数も20枚程度と少なめだ。またオープンな問いも,「なぜサハラ砂漠にはクロコダイルがいるか?」といった自然事象に係る問いであり,カードの内容もそれを補足するような自然地理学あるいは地球物理学的な視点でつくられている。

    準備(カード等を用意する)→(生徒をグループに分ける)→課題(オープンな問い)を紹介→活動(グループ全員でカードを読み込み、関連づけしながら机上に物理的に並べる、)→課題の答えを示す(複数の異なる答えを比較する)→活動の内容やカードのつながりを振り返る(メタ認知)

     どちらかというと,自然地理学・地球物理学的な視点で,自然システムとそれに係わる社会システムの要素からカードがつくられ,グループや個人の活動の振り返り(メタ認知)を重視している。

     さて,前述の二者はカードのつくり方や問いを立てる視点は異なるものの,カードを物理的に配置することで,課題=問い=“謎”を解くという学習手法であることには大きく変わりはない。そして,課題=問いを“謎”に見立てることで,生徒の課題への関心や学習への意欲をかき立てることができ,さらにカードの配置が,生徒の課題に対する思考や,生徒がグループワークにより組み立てた自然/社会のシステムを可視化できるのが利点である。

     一方で学習手法“ミステリー”には限界もある。イギリス型の短文のデータスリップ(カード)ならば30枚を短時間で読んで配置することも可能だろうが,ドイツ型の情報が詰まったカードを20枚以上用意すれば,1時間の授業で関連づけを含めた配置をさせるには限界がある。しかしカードの枚数を削れば,問いに対する答えの多様性が狭められ,また教員の望む答えを誘導しかねない。

    2.学習手法“ミステリー”を地域調査単元に生かすには

     地域調査単元,特にフィールドワークを含む調査を行うことは,コロナ禍も影響して一層困難となった。加えて高校で「地理総合」が必修化されたことによって,地域調査の経験に乏しい教員が地理教育に携わる可能性が増え,地域調査の実施難度が上がったといえよう。しかし,そのような状況下だからこそ,学習手法“ミステリー”を地域調査単元に生かしやすいと考える。

     それは,教員も生徒も必ずかかわる学校周辺地域をフィールドとして,「なぜ,勤務校がここに開校したか」という問い=謎を設定でき,その問いに沿って学校に保存されている資料や,学校周辺のことがらを調べて断片的にカード化するだけで,教材がつくれるからだ。ドイツ型のカード作成方法に近い。素材が集まってくれば,問い=謎に対する答えとなるストーリーもできてくる。そこで,素材を経済/社会/環境に大まかに分類し,欠けている分野の素材を探すことで,さらにストーリーに複雑さが生まれ,生徒に取り組ませたときの問い=謎に対する答えの多様性も生まれてくる。なにより,所属する学校に対する問いは,生徒の意欲や関心を最もかき立てやすい上に,グループワークでカードを並べることで,生徒の視点を生かして地域を構造化し,その特徴を俯瞰できる。

  • *山内 洋美
    日本地理学会発表要旨集
    2021年 2021s 巻 P043
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/03/29
    会議録・要旨集 フリー

    1.はじめに

    新課程必修「地理総合」においては,中学校までの学習内容を生かして,地理的見方・考え方を働かせて,「生活圏」の全体像を把握し,その将来像まで見通せる力を養うことが求められる。

    しかし,高校現場の現状として,①学校周辺地域が「生活圏」でない生徒も多い ②公立学校の教員は,勤務校のある地域に土地勘がなく,勤務年数も短いことが多い ③教員の多くが地理を高校以降学んでいないため,地域調査を指導するための経験がほぼない といった課題がみられる。この現状を無視して「地理総合」の理念を実現しようとしても、2単位という限られた授業時数のなかで生徒主体の授業を実現することは困難であり、結果として教科書を教え込む授業から脱却できない可能性が高いと考えられる。

    そこで,その2単位という限られた時数の中で,地域を包括的に捉え,内包される課題を発見できる教材として,また教員が地理的見方・考え方を身につけるための教材開発の手法として,イギリス発祥の“ミステリー”と呼ばれる手法を用いることを提案する。

    2.地域の課題を発見できるミステリー教材

    “ミステリー”とは,地域の課題についての複数の,一見内容のかみ合わないストーリーをばらばらにカード化したものを再構築しながら,その中で多面的に問われている地域や世界の課題をとらえ,どうするべきか,何が必要かを考えさせることができる教材である。1990年代後半にイギリスで生まれ,オランダを経由してドイツで発展を遂げた。取り上げる地域のスケールや,課題の持つ性質によって,さまざまな形態の“ミステリー”が存在する。例えば,非常に個人的な物語を通じて資料に示されたごく狭い地域の課題について考えたり,地球規模の課題とそれに影響される複数の地域およびそこに暮らす個人の課題を関係づけたりといったものである。共通するのは,共感することがより易しい「名前をもった個人の物語」を組み入れることである。この個人の物語は,架空であってもかまわないが,地理教育で用いる場合には,地域調査で明らかになった事実を反映させることが求められる。

    ここでは,勤務校周辺地域の“ミステリー”を,地域調査を行って一からつくることで,「地理総合」の大単元C 持続可能な地域づくりと私たち の授業づくりを試みる。“ミステリー”作成の手順は次の通りである。①地域を構成する要素を書き出す ②要素を経済/社会/環境に分類し,地域の地理的特徴を把握する ③地域の持続可能性に関わる課題を1つ選ぶ ④要素を用いてミステリーストーリーと情報カードを作る ⑤ミステリーを解き地域の特徴と課題を把握するための問いを設定する である。教員がこの手順に沿って,学校周辺地域を対象としたミステリーを作成することによって,地域調査の手順や,地域に対する地理的見方・考え方を身につけられると考える。

    3.“西陵ミステリー” の作成と実践にあたって

    発表者は現勤務校に昨年4月に着任したばかりで,1学年必修地理A全クラスの担当となった。しかもコロナ禍によって6月入学となり,授業時数も減少している。そのような状況下で,必修となる「地理総合」を想定しながら,学校周辺地域の“西陵ミステリー”作成と実践を試みているところである。

    現勤務校は,かつて宮城県農業短期大学の農場であった丘陵地に,高度成長期後の新興住宅地開発と地域の急激な人口増に伴って建設されたうちの一つで,国道沿いには郊外型店舗が多くみられ,副都心長町も近い。周辺の西多賀・八木山地域は,原生林が残され広瀬川・名取川・笊川の源流域でもある青葉山や太白山とつながり,縄文時代以降の遺跡と江戸時代の宿場町,戦中戦後の亜炭鉱山や野球場などの娯楽施設,軍幼年学校・旧制高校・大学施設などの教育施設や引揚者開拓集落があった。災害の視点からみると,亜炭鉱山の旧い坑道が八木山地下に多く残り,宮城県沖地震や東日本大震災で繰り返し地滑り被害を受けた地域があり,低地では笊川等の氾濫が繰り返され,河道固定や直線化もみられる。

    このミステリー教材を通して,学校周辺地域にゆかりのない生徒も,この複雑な地域の状況を複雑なままとらえて空間的に構築し,地域像を形成できるようになり,持続可能な地域社会について具体的に考える力をつけられるのではないかと考えている。

    開発した“西陵ミステリー”の内容および実践の成果と新たにみえた課題については,当日述べることとする。

  • 小・中・高の防災教育リレーを考える
    *前田 洋介, 森田 匡俊, 大西 宏治, 井田 仁康, 鈴木 康弘
    日本地理学会発表要旨集
    2022年 2022s 巻 S301
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/03/28
    会議録・要旨集 フリー

    1. シンポジウムの趣旨

     本シンポジウムは,地理総合の必履修科目化を踏まえ,防災教育に地理学が果たす役割を検討するものである.特に小・中・高を通じた学習内容の積み上げに着目する. 2022年度より「地理総合」が高等学校の地理歴史科の必履修科目としてスタートする.地理総合の内容は,「地図や地理情報システムで捉える現代世界」,「国際理解と国際協力」そして「持続可能な地域と私たち」から構成される.本シンポジウムの主題である防災教育は,最後の「持続可能な地域と私たち」の中で「自然環境と防災」として重要な位置を占めており,地理総合の柱の一つといえよう.地理総合の必履修科目化と並行して,地理学とかかわりの深い中学校社会科地理的分野や小学校社会科においても,2017年の学習指導要領の改定により,たとえば中学校では「日本の様々な地域の学習における防災学習の重視」(文部科学省2017:16)が改訂の要点の一つに挙げられているように,自然災害や防災に関する内容の充実が図られている.中学校では2021年度より,小学校では2020年度より新学習指導要領にもとづくカリキュラムがスタートしている.

     このように小学校から高等学校に至る地理教育において災害や防災にかかわる内容が充実化する中,一貫性をもって積み上げられるような学習内容の構築が必要であろう.学習内容の積み上げをめぐっては,日本学術会議地域研究委員会・地球惑星科学委員会合同地理教育分科会(2020:iv)の地理総合に関する提言の中でも,「地理総合の効果的な実践実現のために,小・中・高における接続と一貫性に配慮すべき」と述べられている.また,2017年の学習指導要領の改訂に伴い,小学校社会科では学習内容が,「地理的環境と人々の生活」,「歴史と人々の生活」,「現代社会の仕組みや働きと人々の生活」に区分して整理されるようになり,中学校社会科や高等学校地理歴史科・公民科への接続がより意識されるようになった.

     地理教育において災害や防災に関する教育内容の積み上げを検討する際には,災害や防災は地理以外の分野でも取り扱われることや,災害・防災の教育内容を社会科や地理歴史科といった教科固有の目標の中に位置づける必要があることを考慮しなくてはならない.本シンポジウムでは,このような学校教育の実情を踏まえつつ,小・中・高での積み上げを見据えた防災教育において,地理学が果たす役割を模索する.

    2. シンポジウムの構成

     本シンポジウムは以下の6つの発表と総合討論とで構成される.発表1から4では,小・中・高での地理教育における災害や防災に関する教育内容の位置付けや状況について検討する.そして発表5と6では,地理総合の必履修科目化や小・中での防災教育の充実化という局面における教員養成や大学での地理学教育について検討する.その後の総合討論では,上記の報告とフロアからの質問を手がかりに,防災教育をめぐる,小・中・高の教育内容における接続のあり方や地理学の貢献とともに,その中での大学教育の布置について具体的に検討していく.そして総括コメント(鈴木康弘(名古屋大))により本シンポジウムを締め括る.

    <各発表の題目と発表者> 発表1:社会科教育,地理教育,防災教育の違いと接点(井田仁康(筑波大)]/発表2:高等学校「地理総合」につながる中学校社会「地理的分野」の防災に係わる学習とは[山内洋美(

    宮城県仙台西高等学校
    )]/発表3:小学校社会科の学習内容に含まれる防災教育的要素[小野映介(駒澤大)]/発表4:小学校における防災教育のカリキュラム上の位置づけと留意点[大西宏治(富山大)]/発表5:「地理総合」時代の大学教育における教員養成の課題[志村 喬(上越教育大)]/発表6:大学の防災教育・地理学教育は今後どうあるべきか[由井義通・熊原康博(広島大)] 文献 日本学術会議地域研究委員会・地球惑星科学委員会合同地理教育分科会2020. 『提言「地理総合で変わる新しい地理教育の充実に向けて-持続可能な社会づくりに貢献する地理的資質能力の育成」』 文部科学省2017『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説社会編』文部科学省.

  • E-journal GEO
    2022年 17 巻 1 号 161-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/11
    ジャーナル フリー
  • 田部 俊充
    E-journal GEO
    2023年 18 巻 2 号 438-441
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/14
    ジャーナル フリー
  • 地理学評論 Series A
    2022年 95 巻 2 号 146-162
    発行日: 2022/03/01
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー
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