毎年夏から秋にかけてトレーニングセンター (トレセン) および競馬場で発生している不明発熱疾病の原因を解明するために, 1979年の日本国内各地より集収した軽種馬の血清について, ゲタウイルスの血清疫学調査を行なった. その結果, ゲタウイルスがその原因の1つであることが明らかとなった. 特に, 栗東トレセンでは, 7月から10月に発生した発熱疾病馬136頭のうち, ゲタウイルスによるものは50頭 (約40%) であった. 1979年のゲタウイルスの流行は, 栃木県那須郡の生産牧場, 宇都宮育成牧場, 東京競馬場, 美浦トレセンおよび栗東トレセンにおいて, 7月から9月にかけて認められた. しかし, 日高育成牧場および
宮崎競馬場
においては, 認められなかった. 美浦トレセンにおける1979年の原因不明の発熱疾病馬およびゲタウイルス感染馬の総数は, 栗東トレセンの同期および美浦トレセンにおける1978年のそれらよりも極めて少ないものであった. その原因は, 1978年のゲタウイルスの流行および1979年に行なわれたゲタウイルス不活化ワクチンの野外試験により抗体を保有する馬の数が多かったこと, および広範囲に行なわれた消毒剤および殺虫剤の散布による環境の浄化の結果と考えられる.
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