近年, 孤立核家族が増加し, 社会的ネットワークの主体的・選択的形成とその活性化の必要性が高まってきている.そこで, この社会的ネットワークの現状を把握し, 今後の課題を把握するため, 中国・四国地域の中高年期の女性1,439人を対象に調査を実施した.本報では, 個人・家族リンケージの活性化への影響要因を探った.
結果の概要は次のとおりである。
1) リンケージの日常時利用度は, 個人リンケージに比して家族リンケージが高く, なかでは, 親族リンケージが最も高く, 近隣関係がそれにつづく.
2) リンケージの緊急時利用度は, 親族リンケージが最も高く, ついで近隣関係リンケージが高いが, プライバシーにかかわる項目については, 家族を通した知人, 個人リンケージの方が高くなっている.
3) リンケージ人数増加希望は, 利用度と逆傾向を示し, 個人リンケージの方が高く, なかでも幼なじみ・同窓生が高い.
4) リンケージの質的評価としての親密度, 信頼度は, 親族リンケージがもっとも高い.
5) 交流頻度, 近住度は, 近隣関係リンケージの方が親族リンケージより高い.
6) 交流親密度には, 信頼度, 交流頻度の影響がみられ, さらに家族リンケージについては交流人数が, 個人リンケージについては近住度の影響がみられる.
7) 市街地の個人リンケージの利用度には, 近住度の影響が大きい.
以上の結果から, 当地域では, 親族リンケージ, 近隣関係リンケージの利用度が高いが, 近隣関係リンケージの活性化には限界があり, 主体的・選択的に形成される個人リンケージの形成が期待されており, 今後の課題となっている.
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