抄録
今井町居住者の交流からみたネットワークに着目し, 居住者の親類 (別居子・きょうだい) ・近隣・友人との交流の実態を把握するとともに, 高齢期に向けた居住志向について検討した.
(1) 今井町においても, 子どもに頼らない住み方が志向されつつあり, 高齢者用住宅の整備と公的機関による介護支援の重要性が示唆された.
(2) 子と別居の場合でも, 別居子や親類と日常的な交流関係がある.子との居住形態別では, 子と近居の場合は子との頻繁な交流がみられ, 遠居の場合は子と交流し難い代わりに, 親類と交流する傾向がある.
(3) 居住者は, 緊急時などに頼れる相互扶助的な近隣関係を持続している.また, 近隣から精神的サポートや家事援助を受けている場合もあり, 血縁のみならず地縁ネットワークなどを活用した高齢期における生活支援二の可能性が期待できる.
(4) 今井町内の空き家を高齢者用のグループホームやコレクティブハウスのように利用するなど, 空き家利用の要望が存在することも明らかになった.