スモモ果実('ソルダム')の高温(30℃)貯蔵中におけるショ糖の分解原因を明らかにするため,ショ糖分解酵素活性と糖組成との関係を調べた。
(1) 果実のInvertase活性は高かったが,Sucrose synthase活性は著しく低かった。
(2) Invertaseの至適温度は65~70℃で,15分間の加熱安定性を調べると60℃以下で極めて安定であった。
(3) Invertaseの至適pHは,5と9~11の2つの領域に認められたが,前者の活性が顕著に高かった。
(4) InvertaseのKm値は2.56×10-2Mであった。
(5) 成熟過程のInvertase活性は適熟期付近が最も高く,その前後で低下した。3, 20及び30℃貯蔵においては,いずれも貯蔵初期には急減し,減少割合は3℃が最も大きかった。その後3℃ではほとんど変化しなかった。20℃と30℃の活性値には大差はないが,前者では一定の傾向は認められず,後者では貯蔵後期に増加した。3℃から20℃に変温すると一時的に増加した後減少した。20℃から30℃へ変温すると増加したが,30℃から20℃へ変温すると急減した。
(6) 成熟過程の糖組成の変化を調べると,ショ糖は適熟期以後急激に増加したが,ブドウ糖と果糖はほとんど変化しなかった。貯蔵中では3℃と20℃の糖組成に大きな変化はみられなかったが,30℃では貯蔵初期からショ糖の減少とブドウ糖及び果糖の増加が起こり,貯蔵後期にはより顕著になった。これらの変化は20℃から30℃に変温した場合も同様であった。
以上の結果から高温(30℃)貯蔵中の果実のショ糖は内在Invertaseにより加水分解されるが,この程度は貯蔵温度に大きく影響されるものと推察された。
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