ベンチオカーブの水稲作における安全使用を推進するための知見を得るために, 九州各県の土壌を用いて, ベンチオカーブの水稲に対する薬害を, 稲わら施用量, ベンチオカーブの処理方法及び処理後の気温との関係で検討した。
1. ベンチオカーブの水稲に及ぼす影響は土壌の種類, 稲わら施用量, ベンチオカーブの処理方法, 使用量及び処理後の温度によって変動し, 全く薬害がみられない区から, 枯死する区までの変異がみられた。
2. 土壌の種類による差異は福岡農試土壌では薬害がなく, 大分農技及び大分現地土壌では薬害が著しかった。また, 薬害の程度と土壌の粒径分布, 粘土鉱物, 腐植含量, pH, Ehなどとの間には一定の関係がみられなかった。
3. 稲わら施用はベンチオカーブの薬害を助長する場合が多かった。また, 除草剤の種類, 処理方法では, ベンチオカーブは同量でもベンチオカーブ乳剤の移植前混和処理が, ベンチオカーブ・CNP粒剤の移植後処理より薬害が著しかった。同一処理法では使用量の多い場合及び高温条件で薬害が大きかった。
4. ベンチオカーブ・シメトリン粒剤では大多数の土壌で稲わら施用によってシメトリンに基因すると思われる著しい薬害が発現したが, その程度が土壌の種類によって著しく異なった。また, シメトリン混合剤とベンチオカーブとでは土壌の種類による薬害の変動は必ずしも一致しなかった。
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